古代エジプト展 第1章 古代エジプトの死生観 永遠の生命を求めて-(1)
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永遠の生命を求めて
The Status of the Dead
死者が再生・復活して永遠の生命を得るにあたり特に重要な神々は、太陽神と冥界の王オシリス神である。
太陽神は、日中に天を航行して地上の住人に生命を与え、落日で象徴的な死を迎える。夜の間に西から東へ冥界を旅すると、夜明けに再び新たな生命を得る。古代エジプト人はこの永遠のサイクルに自分も加わることを望み、多くの葬送文書に太陽神への礼賛を記した。
永遠の生命を約束するもう1柱の神が、冥界の王オシリス神である。神話では、地上の王だったオシリス神は弟セト神の裏切りで殺害されるが、オシリス神の妹であり妻のイシス女神が遺体をミイラにして再生・復活させ、死者の世界の支配者となった。この神話にあやかって人々は死者をミイラにし、オシリス神のように再生・復活を果たすことを願った。
参考出品1
▼アニの『死者の書』:精霊バーとミイラ
The ba and the mummy, from the book of the Dead of Ani
精霊バーと体が再び合体することは死者が死後も生き続けるために、きわめて重要なことだと信じられてきた。『死者の書』において最も重要な呪文の1つは、この出来事が妨害されることなく、無事に行われることを約束するものである。ある呪文には、「死者の領域において精霊バーが遺体と再び合体するためのもの」という題が付いており、精霊が自由に動ければならないと次のように明記している。「私のバーがどこからでも自由にやって来られるように。もしバーの訪れが遅ければ、ホルスの目がお前に向かって立ち上がるであろう・・・」。
パピルス、彩色 高さ42㎝
新王国時代、第19王朝、前1275年頃、テーベ
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オシリス神像
A statue of Osiris: the container for Anhai's Book of the Dead
第19-20王朝では『死者の書』のパピルスの巻物がオシリス神をかたどった小像の中に保管され、墓に納められる例が見られた。この像の中には、アンハイという女性の『死者の書』が納められていた。木像は、マアト(「秩序」、「正義」、「真実」)という言葉に用いられるヒエログリフの形に似た台座の上に立っている。オシリス神は、羽根の付いたアテフ王冠を被り、王杖と殻竿を握っている。上半身は、模様のある衣装に包まれ、下半身は、様式化した羽根模様で覆われている。肌は、再生・復活の力を象徴する植物の緑色に彩色されている。
第21-22王朝になると上流階級の間にパピルスの巻物を2巻組で副葬することが一般化する。そのうちの1巻を納める入れ物として、通常は再生を象徴する黒色に塗られたこうした小像が、より頻繁に見られるようになった。
木、彩色 高さ64.5㎝
新王国時代、第20王朝、前1100年頃、おそらくテーベ
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