【宇宙の神秘】 「無の空間」 と「場の量子論」
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二つの磁石のN極どうしを近づけると、たがいに反発する。つまり二つの磁石はたがいに力をおよぼしあっている。
ところで、二つの磁石の間には何もない。あるのは空間だけである。
水面を伝わる波や空気を伝わる音波などを考えると、何かが伝わるには「媒質」が必要なようだ。
ところが磁石の場合には、その媒質がみあたらない。重力についても同様である。
17世紀にニュートンは天体にも万有引力がはたらくことを明らかにした。
▲サー・アイザック・ニュートン(Sir Isaac Newton)は、イングランドの物理学者、数学者、自然哲学者。主な業績としてニュートン力学の確立や微積分法の発見がある。
しかし離れたものに力がはたらく理由は謎だった。このような「遠隔作用」に対して、納得できない物理学者は次第に増えていった。
そこで登場したのが、「場」という考え方である。
たとえば、「磁場」は「場」の一種である。
19世紀のイギリスの物理学者マイケル・ファラデーは、磁石の影響が周囲の空間へと徐々に広がっていくとする「近接作用」の考えをもとに、「磁力線」を考案した。
磁力線は、磁場の状態を描いたものともいえる。
▲マイケル・ファラデー(Michael Faraday, 1791年9月22日 - 1867年8月25日)は、イギリスの化学者・物理学者で、電磁気学および電気化学の分野での貢献で知られている。
物理学が考える「場」とは、空間そのものがそなえもつ性質なので、磁場は「無の空間」のあらゆる場所に存在している。そして磁石が空間に置かれると、近くでは磁場の状態が変化し、周囲に影響を及ぼす。
ただし磁場の状態の変化は瞬間に伝わるのではなく、徐々に、とは言っても光の速度で周囲へと広がっていく。
仮に二つの磁石の一方を取り除いたとする。遠隔作用の立場で考えれば、一方の磁石が取り除かれた瞬間に、残された磁石に対する力はなくなる。
しかし実際、「場」による近接作用では、「磁場の変化」が光速で伝わるまでの一瞬の間は磁場は元のままの状態であり、残された磁石は磁場から力を受け続ける。
つまり、磁力は、磁石から磁石へと直接作用するのではなく、一方の磁石がつくった磁場からもう一方の磁石へと作用する。
主役は磁石ではなく、あくまでも「磁場」だということだ。
重力についても、やはりそれを伝える「重力場」を考える
たとえば太陽は、その質量に応じて周囲の重力場の状態を変化させる。
地球のような物体は、重力場から力を受け、太陽のまわりを公転しているというわけである。
◆古典力学の「遠隔作用」で重力を考えると
地球が太陽の周囲を公転しているのは、両者の間に万有引力がはたらいているためだと考える。
もし、太陽を取り除いたら、その瞬間に重力は消え、地球はすぐ公転軌道から飛び出すことになる。
◆実際の重力は「重力場」がになう。
地球が太陽の周囲を公転しているのは、空間を満たす「重力場」の状態が太陽の質量によって変化し、その影響を地球が受けているためだと考えられるようになった。
「重力場」の考え方の場合、
太陽を取り除いたとしたら、太陽がなくなったことによる重力場の変化が地球に到達するまでは、約8分かかる。これは重力場の変化は光と同じ有限の速さで伝わるからである。
そのため約8分間は、地球は公転軌道をまわりつづけるはずである。
◆◆現代物理学の真髄、「場の量子論」
「無の空間」は「場」で満たされており、「場」によって力が伝えられるという基本的な考えがある。
現代の物理学は「場」というものに対する考え方をさらに進めている。
◆電場と磁場は、セットで「電磁場」
ファラデーが「磁力線」を考案した後の19世紀後半、当時知られていた力として、磁力、重力のほか、「電気力」があった。磁力と電気力には互いによく似た性質があることから、イギリスの物理学者ジェームス・マックスウェル(1831~1879)は、磁力と電気力をセットにして方程式にまとめることに成功した。
▲ジェームズ・クラーク・マックスウェル(James Clerk Maxwell、1831年6月13日 - 1879年11月5日)は、イギリスの理論物理学者である。
マイケル・ファラデーによる電磁場理論をもとに、1864年にマクスウェルの方程式を導いて古典電磁気学を確立した。さらに電磁波の存在を理論的に予想しその伝播速度が光の速度と同じであること、および横波であることを示した。これらの業績から電磁気学の最も偉大な学者の一人とされる。また、土星の環や気体分子運動論・熱力学・統計力学などの研究でも知られている。
磁力の「磁場」と電気力の「電場」をセットにしたものを「電磁場」とよんでいる。
電磁場の特徴は、電場の変化が磁場の変化を引き起こし、その磁場の変化がさらに電場の変化をうながすというように、互いに相手をゆり動かしながら、波のように伝わっていくという。
この波を「電磁波」とよんでいる。
マックスウェルは、理論的に推定された電磁波の速さと当時すでに測定されていた光の速さが近かったことから、「光の正体」が「電磁波」だということも解明した。
◆光は粒子か波か
▲アルベルト・アインシュタイン(独: Albert Einstein、1879年3月14日 - 1955年4月18日)は、ドイツ生まれのユダヤ人の理論物理学者。
特殊相対性理論および一般相対性理論、相対性宇宙論、ブラウン運動の起源を説明する揺動散逸定理、光量子仮説による光の粒子と波動の二重性、アインシュタインの固体比熱理論、零点エネルギー、半古典型のシュレディンガー方程式、ボーズ=アインシュタイン凝縮などを提唱した業績により、20世紀最大の物理学者とも、現代物理学の父とも呼ばれる。特に彼の特殊相対性理論と一般相対性理論が有名だが、光量子仮説に基づく光電効果の理論的解明によって1921年のノーベル物理学賞を受賞した。
一方で1905年、アルベルト・アインシュタイン(1879~1955)は、光とは「エネルギーの塊」だとする「光量子仮説」を発表した。
これはある意味では、光が粒子のようなものだとする説である。
つまり、マックスウェルによって確立された「光は電磁場によって伝わる波」という説と対立する説であった。
光は波なのか、粒子なのか・・・
研究が進むにつれて、光は粒子の性質を示す場合も波としての性質を示す場合もあることが実験でも確かめられるようになった。
また完全に粒子だと思われていた「電子」も、実は波としての性質をもっていることがわかってきた。
光も電子も粒子とも波ともいえない「何か」であるらしいのだ。
◆「場」であらわされる素粒子
1900年から1930年代にかけては、超ミクロの世界の物理法則をあらわす「量子力学」がつくりあげられた時期である。
この量子力学を電磁場へ適用すると
波としての光(電磁波)を伝えるはずの電磁場から、粒子のような状態の光(光子)を導きだせるようになった。
つまり「場」というものに量子力学を適用することで、粒子と波という二つの性質を結び付けることに成功したのである。
これを「場の量子化」といい、こうしてつくられた新たな「場」の理論は、「場の量子論」あるいは「量子場理論」とよばれている。
「場」を電光掲示版だとすると、電球が点灯している場所は、エネルギーが集中して素粒子が存在しているようにみえる場所ということになる。
仮想粒子の対生成・対消滅も、電光掲示版の点灯している場所が移り変わるのを想像することでイメージできやすい。
◆素粒子と「場の量子論」
「場」と素粒子をむすびつける「場の量子論」は、現代の物理学では基本的にすべての種類の素粒子の「場」へと拡張されている。
電子の「場」である「電子場」、クォークの「場」である「クォーク場」、といった具合に、「無の空間」にはすべての種類の素粒子に対応する「場」が存在すると考えるのである。
ただし、重力の「場」の量子化は完成していない。
素粒子とは、空間のなかに存在する「固い粒」ではない。
あくまでも空間を満たす「場」というものが主役としてあり、その「場」の状態の特殊なかたち、つまりエネルギーが集中した状態が「素粒子」とよばれるものである。
「場」はあくまで空間がそなえもった性質であり、空間を満たす「物質」ではない。
また、電磁気力や重力といった力はすべて、現代物理学では、素粒子のやり取りによって設明される。
物質としての素粒子と、力を伝える素粒子、つまり、
この世界のすべてが、「無の空間」を満たしている「場」によって理解されようとしている。
これが、現代物理学がたどりついた「世界の姿」である。
◆◆「ヒッグス場」と質量
「無の空間」は素粒子を生みだす能力をもっており、その能力は「場」という考え方によって理解されている。
「無の空間」がもつ「場」の中には、特別なものがある。それが「ヒッグス場」である。
ヒッグス場は、普遍的に存在する量子場の一種であり、おそらく素粒子が質量を持つ原因であると理解されつつある概念である。
すべての量子場には対応する素粒子が存在する。ヒッグス場に対応するのはヒッグス粒子(ヒッグスボソン)である。
◆4つの力と「ヒッグス場」
この世界には「電磁気力」、「重力」、「強い力」、「弱い力」という4種類の基本的な力が存在する。
「強い力」は原子の中で「陽子」と「中性子」を結びつけて「原子核」をつくったり、陽子や中性子の中で「クォーク」という素粒子どうしを結びつけたりする力である。
弱い力は中性子を崩壊させたりする力である。
現代物理学では、四つの力は素粒子(「場」の状態の変化)によって伝えられると考えられている。
電磁気力は「光子」、重力は「重力子」、強い力は「グルーオン」、弱い力は「ウィークボソン」によって、それぞれ伝えられる。
理論的な研究によって、力が素粒子によって伝えられるようすを方程式で表現するには、力を伝える素粒子の質量が本来ゼロでなければならないことがわかっている。そうでなければ、理論が破綻してしまう。
ところが、弱い力がウィークボソンによって伝えられているとすると、それは大きな質量であるということが、加速器の実験などで1960年代にわかっていた。
このままでは、弱い力の理論を完成できない。そこでその矛盾をやり過ごすためのカラクリとして考えられたのが「ヒッグス場」である。
「ヒッグス場」は1964年、イギリスの物理学者ピーター・ヒッグスによって考案された。
▲ピーター・ヒッグス(Peter Ware Higgs, 1929年5月29日 - )は、イギリスの理論物理学者。エディンバラ大学名誉教授。2013年ノーベル物理学賞受賞。
1964年、素粒子の「質量の起源」を説明する電弱理論における対称性の破れ(南部陽一郎の対称性の自発的破れが原型)の理論を提出した。この仮説を裏付けるヒッグス粒子の発見は素粒子物理学の大きな課題となっており、スイスの大型ハドロン衝突型加速器を用いて陽子同士を衝突させ、ヒッグス粒子を検出する計画が進められてきた。
そして2012年7月4日に、CERNがヒッグス粒子ではないかと見られる物質を発見したことを発表するに至っている。CERNの発表の会場にはヒッグスも同席し「生きている間にヒッグス粒子が発見されたことは嬉しい」とコメントしている。
◆ヒッグス場と質量
ヒッグス場は、「無の空間」に一様に広がっているとされる。空間を進むウィークボソンには、ヒッグス場がまとわりつくように作用すると考える。たとえばプールの中を歩くと、水の抵抗によって動きにくくなる。
ウィークボソンにとってヒッグス場は、水の抵抗のようなものである。
このようにして本来は質量ゼロのウィークボソンが動きにくくなり、見かけ上、質量を得ているのだという。
ウィークボソンだけでなく、すべての素粒子の質量はヒッグス場との相互作用で説明される。
◆「真空の相転移」とヒッグス場
ヒッグス場は、宇宙誕生の直後は、このような作用を及ぼさなかったと考えられている。
しかし、宇宙誕生から1000億分の1秒ほど経過したとき、空間の状態が急激に変化する「真空の相転移」という現象がおき、それによってヒッグス場が素粒子と相互作用をおこすようになったという。
真空の相転移がおきる前の状況では、ウィークボソンをはじめ、電子やクォークなどを含むすべての素粒子に質量はなかったとされる。また光子は相転移の後もヒッグス場と相互作用をしないため、現在でも質量はゼロである。
◆◆真空の相転移
自然界には、電磁気力、重力、強い力、弱い力という四つの基本的な力がある。
これらの力を媒介する素粒子は理論上、質量がゼロでなければならないが、弱い力を媒介するウィークボソンに質量があることが実験によって確認され、この矛盾を解決するために、素粒子にまとわりつくようにして質量を生みだす「ヒッグス場」というものが考え出された。
そのヒッグス場の性質を変化させ、質量を生みだすきっかけとなった「真空の相転移」とは・・・・
◆「真空の相転移」と4つの力
一般的に、相転移とは、たとえば水という物質が、水蒸気、液体の水、氷というように、その性質を急激に変化させることをいう。これと似たようなことが、宇宙初期の空間でもおきたと考えられている。
一方で、自然界の四つの力はもともとは1種類の力だったと考えられている。
そして空間が「真空の相転移」をおこすたびに、1種類の力が枝別れし、別々の力となったというのが、現代物理学の標準的な考え方となっている。
◆「真空の相転移」と宇宙の歴史
宇宙誕生の瞬間、四つの力のもとになる1種類の力=「原始の力」が誕生した。
「原始の力」がみられたのは、ほんの一瞬のできごとであったと考えられている。
◆1回目の相転移
宇宙誕生から僅か10の-44乗秒後=1兆分の1の1兆分の1の1兆分の1のさらに1億分の1秒後には、1回目の相転移がおき、原始の力と重力とが分岐した。
重力が枝分かれした後の原始の力は、電磁気力、強い力、弱い力の三つの力が統合された状態の「大統一力」である。
◆2回目の相転移
宇宙誕生から10の-36乗秒後=1兆分の1の1兆分の1の1兆分の1秒が過ぎたとき、2回目の相転移がおきた。これにより大統一力と強い力が分岐したらしい。
この時点で、宇宙には重力、強い力、そして「電弱力」(電磁気力と弱い力が統合された力)が存在していることになる。
◆3回目の相転移
宇宙誕生から10の-11乗秒後=1000億分の1秒後、3回目の相転移がおきた。
これにより電弱力が電磁気力と弱い力にわかれ、四つの力が出そろったことになる。
また、この際、ヒッグス場の性質が変化し、素粒子と相互作用をおこすようになった。
そのため、ウィークボソンなどの素粒子に質量が生まれたと考えられている。
◆4回目の相転移
宇宙誕生から10の-4乗秒後=1万分の1秒後に、4回目の相転移がおきたという。
この4回目の相転移は、力の分岐とは直接の関係はないが、クォークどうしが強く結びつく「クォークの閉じ込め」がおきた。
閉じ込められたクォークは、物質の材料となる陽子や中性子となった。
以上が宇宙の歴史の中で、「真空の相転移」がはたしてきた役割の概要である。
これらは素粒子物理学の標準モデルとよばれるものから導かれた結果である。
宇宙の初期において、超高エネルギーの状態から温度が下がるにつれ、「無の空間」は劇的にその性質を変化させ、現在にいたっているというわけである。
◆◆真空の斥力エネルギー
「無の空間」は素粒子を生みだす能力をもっており、その能力は「場」という考え方によって理解されている。ところが「無の空間」は、まだ不思議なものを隠しもっているという。
1988年、アメリカの二つの研究グループが別々に発表した論文で、宇宙の膨張が加速していることが確かめられた。
実はそれまで、宇宙の膨張は減速しているのが当たり前だと考えられていたという。
時空と重力の理論であるアインシュタインの相対性理論によると、宇宙空間にある銀河などの物質の重力は、宇宙の膨張にブレーキをかけるようにはたらくという。このため研究者たちは、宇宙膨張の勢いは過去に比べて弱まっているのが当然だと思いこんでいたらしい。
アメリカの研究グループは、超新星を遠くの(昔の)宇宙から近くの(最近の)宇宙までいくつも観測して、過去から最近までの宇宙膨張速度をくわしく調べた。
その結果、大方の思い込みとは反対に、宇宙の膨張は加速していたのである。
研究者たちは、宇宙空間を押し広げるようにはたらく斥力をもつ正体不明のエネルギーが、空間を一様に満たしている可能性があると考えるようになった。
これは「ダークエネルギー」と呼ばれている。
また、別の観測により、宇宙に存在するすべての質量とエネルギー(相対性理論では、質量とエネルギーは同等のものとされる)の総計のうち、銀河をつくるような通常の物質は約4%、銀河を取りまくように分布する正体不明の「ダークマター」は約22%、残りの約74%はすべて斥力としてはたらく「ダークエネルギー」だと推定されるという結果も出ている。
ダークエネルギーの正体探しは、天文学者や物理学者の大きな研究テーマとなっている。
◆「無の空間」の姿
物質も素粒子も取りのぞいて空っぽにしたはずなのに、そこでは無数の仮想粒子が沸き立っていたり、あるいはそもそも素粒子というものが「無の空間」に広がる「場」から生みだされるものであったり、さらには空間そのものの性質が変化する相転移がおこったり、はたまた正体不明の斥力エネルギーを隠しもっていたり・・・・。
現代物理学は、「無」とは「物質も素粒子も取りのぞいた空間」であっても、そこには、いろいろなドラマチックで不可思議なことが次々におこっていると語っている・・・・。
◆◆注目の素粒子
◆ニュートリノ
ニュートリノ( neutrino)は、素粒子のうちの中性レプトンの名称。電子ニュートリノ・ミューニュートリノ・タウニュートリノの3種類もしくはそれぞれの反粒子をあわせた6種類あると考えられている。ヴォルフガング・パウリが中性子のβ崩壊でエネルギー保存則と角運動量保存則が成り立つように、その存在仮説を提唱した。「ニュートリノ」の名はβ崩壊の研究を進めたエンリコ・フェルミが名づけた。フレデリック・ライネスらの実験により、その存在が証明された。
1987年大マゼラン星雲内で起きた超新星・SN 1987Aからのニュートリノを小柴 昌俊が自らが設計を指導・監督した「カミオカンデ」が検出。2002年にノーベル物理学賞を受賞した。
またスーパーカミオカンデで、素粒子「ニュートリノ」が質量を持つことを示す「ニュートリノ振動の発見」で梶田隆章が2015年ノーベル賞を受賞した。
◆ヒッグス粒子
ピーター・ヒッグスPeter Higgsは、欧州原子核研究機構 (CERN) によって存在が確認された素粒子(ヒッグス粒子)に基づく、「質量の起源を説明するメカニズムの理論的発見」で2013年ノーベル物理学賞を受賞した。
ヒッグス機構では、宇宙の初期の状態においてはすべての素粒子は自由に動きまわることができ、質量を持たなかったが、低温状態となるにつれ、ヒッグス場に自発的対称性の破れが生じ、真空期待値が生じた(真空に相転移が起きた)と考える。これによって、他のほとんどの素粒子がそれに当たって抵抗を受けることになった。これが素粒子の動きにくさ、すなわち質量となる。
◆ミュー粒子
ミュー粒子 (muon, μ) とは、素粒子標準模型における第二世代の荷電レプトンである。英語名でミューオン(時にはミュオン)と表記することもある。
ミュー粒子は、1936年にカール・アンダーソンとセス・ネッダーマイヤーによって宇宙線の中に観測された。粒子が霧箱の中で描く曲飛跡から、電子と同じ電荷だが電子より重い新粒子であると推定された。
1937年には、理化学研究所の仁科芳雄のグループ(仁科芳雄、竹内柾、一宮虎雄)およびストリート(J.C. Street)とスティヴンソン(E.C. Stevenson)らが独立に、ウィルソン霧箱実験によって新粒子の飛跡を捉えた。
ミュー粒子による【ピラミッド・スキャン・プロジェクト】 2016年調査開始
エジプト考古省は、地球に降り注ぐ宇宙線を利用し、首都カイロ近郊ギザなどのピラミッド内部を調査すると発表した。破壊せずに内部の構造を把握する試みで、日本の最新デジタル技術を活用。未知の部屋が見つかれば、世紀の大発見につながる可能性がある。
名古屋大の森島邦博特任助教(素粒子物理学)や高エネルギー加速器研究機構の高崎史彦理学博士ら日本の研究者のほか、フランスとカナダの研究チームも加わる。
東京電力福島第一原子力発電所2号機の原子炉内部を透視することにも成功した宇宙線・ミュー粒子を用いて、透視技術を駆使してピラミッドを調査する。
地球に飛来する宇宙線が大気と衝突する際に発生す「ミュー粒子」は物質の密度によって粒子の透過量が変化する性質がある。