パケレスと妻アセトのステラ E-9
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◆パケレスと妻アセトのステラ (石碑)
パケレスと妻のアセトが椅子に腰掛け、さまざまな形のパンや籠に盛られた果物、玉ねぎなど食べ物が盛られた円卓の両側に座っている。食べ物の上にはロータス(蓮)の花束があり、アセトが開花した花の匂いをかいでいる。卓の下にはビールの入った水差しがある。夫婦は洗練された服をまとい、幅広い首飾りをつけ、鬘の上の「円錐形」で表されている香油の香りに包まれている。
夫婦は化粧をしており椅子の下の手の届くところにコホルの容器とアセトの鏡がある。
エジプト人家庭の上等な夕食時に訪れたような印象を受けるだろうが、この葬祭用ステラの場面にはオシリス神への呪文が装飾されている。パケレスが来世でも「食の喜びと社会の楽しみ」を十分得られるようにと願っていたからである。
◆今も昔も人の願いはあまり変わらないようである。因みにヤスコヴィッチの食卓には花束はない。花の匂いは勿論ない。チラシやダイレクトメールの束があるだけだ。おお、哀しいぞよ。
新王朝時代、第18王朝、前1550~1295年頃 古代エジプト展(ルーブル美術館所蔵)