倦怠・・・中原中也
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「倦怠」・・・中原中也
倦怠の谷間に落つる
この真っ白い光は、
私のこころを悲しませ、
私のこころを苦しくする。
真っ白い光は、沢山の
倦怠の呟きを掻き消してしまひ、
倦怠は、やがて憎怨となる
かの無言なる惨ましき憎怨・・・
忽ちにそれは心を石と化し
人はただ寝転ぶより仕方もないのだ。
同時に、果たされずに過ぎる義務の数々を
悔いながらに数へなければならないのだ。
はては世の中が偶然ばかりとみえてきて、
人はただ、絶えず慄へる、木の葉のやうに
午睡から覚めたばかりのやうに
呆然たる意識の裡に、眼光らせ死んでゆくのだ。
「四季」 一九三五年 七月号 「倦怠」・・・中原中也













