統一理論への道 第1回 (1) 相対性理論の登場
|
編集中
◆統一理論への道 第1回 (1) 相対性理論の登場
◆◆特殊相対性理論 (1905)
特殊相対性理論(Special relativity)とは、アルベルト・アインシュタインが1905年に発表した、慣性系に対する電磁気学および力学の理論である。
特殊相対性理論では、二つの原理を採用した。
●光速度不変の原理:
真空における光の速度 c はどの慣性座標系でも同一である。
●相対性原理:
全ての慣性座標系が等価であること。
◆質量=エネルギー
質量欠損や核反応・対消滅から、質量を持つ物質は mc² のエネルギーを持つことが確かめられている。
◆◆光速度不変の原理
アインシュタインは光速度は絶対で、いかなるものも光速を超えられないとした。
これは「光速度不変の原理」で、あくまでも「原理」なので証明されたわけではない。
光速度不変の原理を考える。
二つの物体に働く力はどれだけの速さで伝わるのだろうか.
瞬時に伝わるのを『遠隔作用』,ある程度の時間がかかって伝わるのを『近接作用』という.
マクスウェルの電磁気学(マクスウェル方程式)では,電磁気力は光速で伝わるという事が分かった.
光速は無限ではないので,『近接作用』である.
一方,ニュートンの万有引力の法則では力は瞬時に伝わるので,『遠隔作用』である.
力の伝わる速さに最大値がある事と,相対性原理を一緒に考えると,
「全ての慣性系において,力の伝わる速さの最大値が同じ」という事になる.
ニュートン力学において,ガリレイ変換では相対性原理を満たし,かつ力の伝わる速さは無限大だった.
アインシュタインの特殊相対性理論は,相対性原理と光速度不変の原理の両方を満たす。
それでは日常生活でガリレイ変換を用いて困らないのはなぜか.それは,前の章で述べたように光速は非常に速いので,日常生活では「光速が無限に速い」と考えても,計算結果が大きくずれないからである。
光速度は約30万km/秒で、太陽の光が地球に到達するのにかかる時間は、
瞬時ではなく、約8分20秒かかる。
◆特殊相対性理論とパラドックス
◆時計のパラドックス
今、ここに一組の双子がおり、二人は慣性運動しながら次第に離れているとする。
このとき兄から見ると、弟の時計は遅れてみえ、逆に弟から見ると兄の時計は遅れてみえる事が特殊相対性理論から帰結される。
これは一見奇妙に見えるため、時計のパラドックスと呼ばれることもあるが、実は特に矛盾している訳ではない。なぜなら慣性運動している二人は二度と出会うことがないので、もう一度再会してどちらの時計が遅れているのかを確認するすべはないからである。
◆双子のパラドックス
一組の双子がいて、弟は慣性運動している。一方、兄はロケットに乗って遠方まで行き、その後ロケットで弟のもとに帰ってきたとする。前述のように弟からみれば兄の時計は遅れるはずで、兄の時計からみれば弟の時計は遅れるはずなので、ふたりが再会したときに矛盾が生じるはずである。
結論からいえば、特殊相対性理論から示されるのは、ロケットに乗った兄より慣性運動していた弟の方が再会時に時計が進んでいるという事である。すなわち再会時に兄が弟よりも若い。
なぜならミンコフスキー空間上で、兄がロケットで飛び立ったときの世界点を x→ とし、兄が再び弟に再会したときの世界点を y→ とすると、x→ と y→ を結ぶ世界線のうち最も固有時間が長くなるのは慣性運動する世界線であることをすでに示したからである。従って慣性運動していた弟はロケットに乗った兄より多くの固有時間を費やした事になるのである。
では逆に弟のほうが兄より若くなったとする主張のどこが間違っていたのかというと、我々が時間の縮みの公式を導いたとき、慣性系である事を仮定していたのであるが、兄の座標系はロケットが行きと帰りで向きを変える際加速度運動しているので慣性系ではない。従って兄の座標系に対して単純に時間の縮みの公式を適応したのが間違いだったのである。
◆◆一般相対性理論 (1916)
一般相対性理論(General theory of relativity)は、アルベルト・アインシュタインが1905年の特殊相対性理論に続いて1915年から1916年にかけて発表した物理学の理論である。
一般相対論(General relativity)とも言われる。ニュートン力学で記述すると誤差が大きくなる現象(光速に近い運動や、大きな重力場における運動)を正しく記述できる。
一般相対性原理と一般共変性原理および等価原理を理論的な柱とし、リーマン幾何学を数学的土台として構築された古典論的な重力場の理論であり、古典物理学の金字塔である。測地線の方程式とアインシュタイン方程式(重力場の方程式)が帰結である。時間と空間を結びつけるこの理論では、アイザック・ニュートンによって万有引力として説明された現象が、もはやニュートン力学的な意味での力ではなく、時空連続体の歪みとして説明される。
◆◆一般相対性理論と万有引力の法則
アインシュタイン方程式は微分方程式として与えられているため局所的な理論ではあるが、ちょうど電磁気学における局所的なマクスウェル方程式から大域的なクーロンの法則を導くことができるように、アインシュタイン方程式は静的なニュートンの万有引力の法則を包含している。
ニュートンの「万有引力の法則」との主な違いは次の3点である。
1.重力は瞬時に伝わるのではなく光と同じ速さで伝わる。
2.重力から重力が発生する(非線形相互作用)。
3.質量を持つ物体の加速運動により重力波が放射される。
ここで、3.は荷電粒子が加速運動することにより電磁波が放射されることと類似している。これは、万有引力の法則やクーロンの法則に、運動する対象の自己の重力や電荷の効果を取り入れていることに対応している。
◆◆一般相対性理論と重力
アインシュタインは、光速度に近い場合の力学として、1905年に特殊相対性理論を発表した後、加速度運動を含めた相対性理論の構築に取り掛かかった。そして重力場を時空の幾何学として取り扱う方法を模索し、1916年に一般相対性理論を発表した。
アインシュタイン方程式からは、時空の歪みの源は質量ではなく、エネルギーと運動量からなるエネルギー・運動量テンソルで決まることがわかる。つまり、質量(エネルギーに比例)だけでなく運動量も時空を歪め、重力を生む。質量は引力を生むのに対し、運動量が生む重力は、引力でも斥力でもない慣性系の引きずりという形を取る。慣性系の引きずりは自転するブラックホールであるカー・ブラックホールで顕著である。慣性力も、地球外の全宇宙による慣性系の引きずりで説明できるとの見方が強い。
アインシュタインの重力場の方程式(アインシュタイン方程式)では、万有引力はもはやニュートン力学的な力ではなく、重力場という時空の歪みである、と説明されるようになった。また、重力の作用は、瞬時ではなく光速度で伝えられる、とされるようになった。
ニュートンの万有引力の法則では、質量を持った物体間の力であるとされるので、質量を持たない物質には万有引力は存在しない事となる。 一般相対性理論では、重力が時空の歪みであるとするため、光の軌道もまた重力によって曲がる事を意味する。これはアーサー・エディントン による太陽の重力レンズ効果の観測で実証されることになった。
一般相対性理論は、非常に強い重力が働く場を記述する。太陽系であれば、ニュートン力学に若干の補正項が加わる程度なので、ニュートン力学はその意味で近似的に正しいと考えて差し障りない。例えば前述の光の軌道の歪みについても、太陽の近傍においてようやく観測され得るものである。 アインシュタイン方程式は、通常の物理の方程式と同様、時間反転に対して対称なので、宇宙全体に適用すると、重力の影響で収縮宇宙の解と共に、膨張宇宙の解が得られる、という。
一般相対性理論の発表当時は、ハッブルによる膨張宇宙の発見前で、アインシュタインは「宇宙は静的で安定している」と考えていた。自身の方程式が、動的な宇宙を予言したため、アインシュタインは万有引力に拮抗する万有斥力があると想定し、重力場の方程式に宇宙項を加えることで、静的な解が存在できるように重力場の方程式を修正した。
後に彼は宇宙項を「生涯最大の過ち」と悔いた。
「だが、宇宙項のアイデアは現在の宇宙論では、宇宙のインフレーションや宇宙の加速膨張を説明するものとして復活していると言える」と言う。
◆◆一般相対性理論での予測
一般相対性理論では以下のことが予測される。
◆重力レンズ効果
重力場中では光が曲がって進むこと。アーサー・エディントンは、1919年5月29日の日食で、太陽の近傍を通る星の光の曲がり方がニュートン力学で予想されるものの2倍であることを観測で確かめ、一般相対性理論が正しいことを示した。
◆水星の近日点の移動
ニュートン力学だけでは、水星軌道のずれ(近日点移動の大きさ)の観測値の説明が不完全だったが、一般相対性理論が解決を与え、太陽の質量による時空連続体の歪みに原因があることを示した。
◆重力波
時空の歪み(重力場)の変動が伝播する現象。線型近似が有効な弱い重力波の伝播速度は光速である。アインシュタインによる予測の発表から100年目の2016年に、アメリカのLIGOにより直接観測された。
◆膨張宇宙
時空は膨張または収縮し、定常にとどまることがないこと。ビッグバン宇宙を導く。
◆ブラックホール
限られた空間に大きな質量が集中すると、光さえ脱出できないブラックホールが形成される。
◆重力による赤方偏移
強い重力場から放出される光の波長は元の波長より引き延ばされる現象。
◆時間の遅れ
強い重力場中で測る時間の進み(固有時間)が、弱い重力場中で測る時間の進みより遅いこと。
一般相対性理論は慣性力と重力を結び付ける等価原理のアイデアに基づいている。等価原理とは、簡単に言えば、外部を観測できない箱の中の観測者は、自らにかかる力が、箱が一様に加速されるために生じている慣性力なのか、箱の外部にある質量により生じている重力なのか、を区別することができないという主張である。
相対論によれば空間は時空連続体であり、一般相対性理論では、その時空連続体が均質でなく歪んだものになる。つまり、質量が時空間を歪ませることによって、重力が生じると考える。そうだとすれば、大質量の周囲の時空間は歪んでいるために、光は直進せず、また時間の流れも影響を受ける。これが重力レンズや時間の遅れといった現象となって観測されることになる。また質量が移動する場合、その移動にそって時空間の歪みが移動・伝播していくために重力波が生じることも予測される。
アインシュタイン方程式から得られる時空は、ブラックホールの存在や膨張宇宙モデルなど、アインシュタイン自身さえそれらの解釈を拒むほどの驚くべき描像であった。
◆◆ニュートン力学(Newtonian mechanics)
ニュートン力学(Newtonian mechanics)は、アイザック・ニュートンが、運動の法則を基礎として構築した、力学の体系のことである。
◆◆ニュートンの運動の法則
ニュートン力学は、物体を「重心に全質量が集中し大きさをもたない質点」とみなし、その質点の運動に関する性質を法則化し、以下の運動の3法則を提唱した。また、これらの法則は、質点とは見なせない物体(剛体、弾性体、流体などの連続体)に対しても基礎となる考え方である。
◆第1法則 (慣性の法則)
質点は、力が作用しない限り、静止または等速直線運動する。
◆第2法則 (ニュートンの運動方程式)
◆第3法則 (作用・反作用の法則)
力学分野における数多くの法則や定理は、基本的には、上の三つの法則から導出されるものである。 また、位置ベクトルの時間に対する 2 階の常微分方程式である運動方程式は、ある時刻の位置と運動量(あるいは速度)を与えれば、あらゆる時刻の運動状態が確定する方程式であり、その意味で、ニュートン力学は決定論的であるとされる。
◆ニュートンの万有引力の法則
ニュートンは、太陽を公転する地球の運動や木星の衛星の運動を統一して説明することを試み、ケプラーの法則に、運動方程式を適用することで、万有引力の法則が成立することを発見した。
これは、『2つの物体の間には、物体の質量に比例し、2物体間の距離の2乗に反比例する引力が作用する』と見なす法則である。力そのものは、瞬時すなわち無限大の速度で伝わると考えた。
式で表すと、万有引力の大きさをF 、物体の質量をM , m 、 物体間の距離をr として、
◆ありがちな誤解
ちなみにニュートンによる「万有引力の法則の発見」を“重力の発見”だと解釈してしまう例があるが、これは間違った解釈である。「リンゴが木から落ちるのを見て、ニュートンは万有引力を発見した」などとする、単純化された、巷に流布している逸話も、この誤解を広める原因になっている可能性がある。
ニュートンは「リンゴに働く重力」を発見したわけではない。「リンゴに対して働いている力が、月や惑星に対しても働いているのではないか」と着想したのである。
地上では物体に対して地面(地球)に引きよせる方向で外力が働くことは、(ガリレオなどの貢献もあり)ニュートンの時代には理解されていた。ニュートンが行った変革というのは、同様のことが天の世界でも起きている、つまり宇宙ならばどこでも働いている、という形で提示したことにある(そして同時に、地球が物体を一方的に引くのではなく、全ての質量を持つ物体が相互に引き合っている事と、天体もまた質量を持つ物体のひとつに過ぎない事)。
「law of universal gravitation 万有引力の法則」という表現は、それを表している。
◆◇◆重力
重力とは、
地球上で物体が地面に近寄っていく現象や、それを引き起こすとされる「力」を呼ぶための呼称。人々が日々、物を持った時に感じているいわゆる「重さ」を作り出す原因のこと。
物体が他の物体に引きよせられる現象の呼称。および(その現象は《力》が引き起こしていると見なす場合の)その「力」に対する呼称。
重力という表現は、宇宙論などの領域では万有引力と同一として扱われることがある。
地球上のことについて論じている場合は、地球上の物体に対して働く地球の万有引力と地球自転による遠心力との合力を指している。重力加速度の大きさは、単位「ガル (Gal)」を用いて表すことができる。
◆コペルニクスは、重力というのは、各天体の部分部分が球形になりたがり一体化しようとする自然的な欲求だ、とした。
ガリレオ・ガリレイ(ユリウス暦1564年–グレゴリオ暦1642年)は重さと落下の速さとは無関係であることを実験で見出した。
オランダのホイヘンス(1629年–1695年)は1669年から1690年にかけてデカルトの渦動説を検討し精密化した。ライプニッツも渦動説の流れを汲んだ理解をしていた。
◆アイザック・ニュートン(1642 - 1727)は、天体の運動も地上の物体の運動もひとつの原理で説明できる、とする説(万有引力)を『自然哲学の数学的諸原理』で発表した。天界と地上の区別がとりはらわれており、宇宙全域の物体の運動を同一の原理で説明しており、地上のgravityというのも万有引力の一つの現れとされている。
またホイヘンスは、遠心力の公式を発見した。地球の自転はすでに明らかになっていたので、重力は万有引力そのものではなく、万有引力と地球の自転による遠心力との合力だということになった。
◆エルンスト・マッハ(1838 - 1916)は、「慣性力は宇宙の全質量の作用として考えなければならない」とした。例えば、回転するバケツの水面をへこませる慣性力についてマッハは、「慣性力はバケツが絶対空間に対してまわったから発生したのではなく、宇宙の物質が回転するバケツに、ある作用を及ぼした結果、発生した」と考え、「バケツがまわることと、バケツを止めて宇宙をバケツのまわりに逆回転させることは同等である」とした(マッハの原理)。
マッハの原理は、アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論により体系化された。一般相対性理論によれば、万有引力も慣性の力も等価(等価原理)であり、共に、時空の歪みによる測地線の変化である。ただ、万有引力と慣性の力とでは歪みの原因が異なるにすぎない。
◆◆素粒子物理学と重力
素粒子物理学では、自然界に存在する四つの基本的な相互作用のひとつとして、素粒子間に働く重力相互作用とみなされ、重力子(グラヴィトン)という素粒子により媒介するとみなされるが、素粒子としての重力子は現在のところ未発見である。素粒子間の重力相互作用は無視できるほど小さいが、素粒子と地球との間の重力を考慮する必要があることもある。
素粒子物理学では、重力は自然界に働く4つの力のうちの一つとして扱われており、電磁気力、弱い力、強い力との統合が試みられている。だが、その試みがうまくいくのかどうか定かではない。なお、2010年にアムステルダム大学理論物理学院のエリック・ベルリンドにより、重力は存在しないという説も提唱された。
◆◆量子重力と量子宇宙論
近年では、一般相対性理論での重力を量子化し、量子重力理論にしようとする試みもなされている。
相対性理論の結合、重力の量子化が試みられ、量子重力と呼ばれている。量子化された重力は重力子と名づけられている。格子重力などさまざまな試みがあるが、実現は困難である。
量子重力を宇宙論に適用する試みは、量子宇宙論と呼ばれる。