統一理論への道 第1回 (2) 電磁気力と量子力学の登場
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◆統一理論への道 第1回(2)電磁気力と量子力学の登場
◆◇◆電磁気学と電磁気力
電磁気学(Electromagnetism)は、物理学の分野の1つであり、電気と磁気に関する現象を扱う学問である。
電磁気学は、電磁的現象を電荷と電磁場の相互作用として説明する理論体系である。 電荷は物質に固有の物理量であり、物質と電磁場との結び付きの強さを表す量である。また、電磁場は時空の各点が持っている物理量であり、物質間の電気的作用と磁気的作用を媒介する。
◆電磁気力 (Electromagnetic force)
電磁場は電荷と電流(電荷の流れ)に力を及ぼす。この力をローレンツ力という。逆に、電荷・電流の存在は電磁場に影響を与える。電磁場の振る舞い、及び電荷・電流が電磁場に与える影響はマクスウェル方程式で記述される。
ローレンツ力とマクスウェル方程式は電磁気学における最も基礎的な法則である。
▼マクスウェルの4つ方程式

マクスウェルによって電気の力と磁気の力は「電磁気力」に統一された。

マクスウェル方程式の解の1つとして、電磁場の周期的振動である電磁波が得られる。日常的に「光」と言われている物も、実は電磁波の一種である。電磁波は波長や発生機構によって呼び名が変わる。
電気通信などに用いられる波長の長い電磁波は電波、それより波長が短くなると赤外線、可視光線、紫外線、更に波長が短い電磁波は、発生機構によりX線、ガンマ線と呼ばれる。
◆電磁気力と量子力学
19世紀末、多くの物理学者は「全ての物理現象はニュートン力学、ローレンツ力、マクスウェル方程式で原理的には説明できる」と考えていた。
しかしその後、ニュートン力学と電磁気学では説明できない現象が次々に発見された。光電効果、黒体放射のエネルギー密度、コンプトン効果は光を粒子であると考えると説明できるが、このことは電磁気学における「光は電磁波である」という描像に反する。また、電磁気学によればラザフォードの原子模型は安定に存在しえないことが結論づけられるが、実際の原子は安定である。
ニュートン力学・電磁気学で記述できないようなこれらの現象を記述しようと努力した結果が、量子力学という全く新しい物理学の誕生である。
◆1940年代には、電磁気学の量子論である量子電磁力学(QED)が完成した。
量子電磁力学では、電磁場と荷電粒子の場の両方が量子化され、荷電粒子間の相互作用は電磁場の量子である光子の交換として理解される。
◆電磁気力と特殊相対性理論
マクスウェル方程式によると、真空中の電磁波の速度は慣性系の選び方によらない基本的な物理定数(真空の誘電率と透磁率)だけで定まる。実際、真空中の光速は慣性系によらず一定であること(光速度不変の原理)は実験的に立証されている。
特殊相対性理論は、
光速度不変の原理と特殊相対性原理を指導原理として、アインシュタインが構築した理論である。
◆◇◆量子力学(Quantum mechanics) の登場
量子力学(Quantum mechanics)は、一般相対性理論と同じく現代物理学の根幹を成す理論として知られ、主として分子や原子、あるいはそれを構成する電子など、微視的な物理現象を記述する。
量子力学自身は前述のミクロな系における力学を記述する理論だが、取り扱う系をそうしたミクロな系の集まりとして解析することによって、ニュートン力学に代表される古典論では説明が困難であった宇宙のような巨視的な現象についても記述することができる。
◆波動力学と行列力学
代表的な量子力学の理論として、エルヴィン・シュレーディンガーによって創始された、シュレーディンガー方程式を基礎に置く波動力学と、ヴェルナー・ハイゼンベルク、マックス・ボルン、パスクアル・ヨルダンらによって構成された、ハイゼンベルクの運動方程式を基礎に置く行列力学がある。
基礎科学として重要で、現代の様々な科学や技術に必須な分野である。
たとえば科学分野について、太陽表面の黒点が磁石になっている現象は、量子力学によって初めて解明された。
技術分野について、半導体を利用する電子機器の設計など、微細な領域に関するテクノロジーのほとんどは量子力学を基礎として成り立っている。そのため量子力学の適用範囲の広さと現代生活への影響の大きさは非常に大きなものとなっている。一例として、パソコンや携帯電話、レーザーの発振器などは量子力学の応用で開発されている。工学において、電子工学や超伝導は量子力学を基礎として展開している。
◆古典力学との相違
相対性理論やニュートン力学のような古典力学、また古典的な電磁気学と量子力学との大きな違いとして、不確定性原理や相補性原理に代表される、観測行為とそれによって記述される物体や系の状態の取り扱いや、それによって要求される確率的な現象の記述が挙げられる。
事象が確率的にのみ記述されるということは、ニュートン力学などで成り立っていたような強い意味での因果律が成り立たないことを意味する。より詳細に言えば、量子力学において成り立つ因果律とは、シュレーディンガー方程式によって記述される波動関数の時間的変化が因果的であることをいう。
他にも量子力学によって示される自然の際立った特徴として、原子や電子が粒子としての特徴を示す一方で波としての特徴も示す(物質波の概念)ことが知られている。一方、光や電波のような電磁波もまた、波としての性質を示す一方で粒子としての特徴も示す(光量子仮説)ことが知られている。
これらの粒子性と波動性は同時には現れず、粒子的な振る舞いをする場合には波動的な性格を失い、逆に波動的な振る舞いをする場合には粒子的な性格を失う。
量子力学の応用例の中で、古典論では解決できない問題としては、原子の安定性や大きさの一様性、黒体放射におけるプランクの法則の説明や、多原子分子からなる気体の比熱容量の決定などが挙げられる。
◆量子力学のはじまりと歴史
量子論の直接的なはじまりは、黒体放射の分光放射輝度に関するマックス・プランクの研究に見られる。量子仮説を導入し統計力学からプランクの法則を再導出した1900年12月の論文による。
量子力学の数学的な取り扱いが整備されるのは1925年から1927年頃にかけてのことであり、ヴェルナー・ハイゼンベルクの行列力学とエルヴィン・シュレーディンガーの波動力学の登場による。
20世紀初頭まで知られていた物理学の基礎理論はすべて決定論的であったが、20世紀の初頭に建設されていった量子力学は、次第に非決定論的な性格を帯びたものであることが知られるようになった。量子力学が非決定論的であることが知られるにつれ、量子力学が真に非決定論であるか、あるいは量子力学に変わる決定論的な理論が存在し得るかなどといった議論が生じ、量子力学の理論形式の解釈をめぐり論争が展開された。
◆不確定性原理
たとえば量子力学が形成される初期において、従来のニュートン力学や相対性理論と異なり、物体が時空上に定まった軌道をとらないが、実験においてはウィルソンの霧箱などを利用することで粒子の軌跡を知ることができ、見かけ上は古典的な運動が実現されていることが指摘された。この粒子の飛跡を説明する過程で、ハイゼンベルクにより不確定性原理が発見され、粒子の飛跡の問題について正当性のある物理的解釈が得られるようになった。
不確定性原理によれば、物体の位置と運動量の両方を定めることができず、位置を精度よく定めるほど、運動量を正確には決定できなくなる。しかしながら位置と運動量の不確定性の積は、プランク定数程度の大きさになるので、霧箱の実験においては位置と運動量を充分な精度で測定することができ、粒子が連続的に運動しているように見えることについて説明付けられる。
ハイゼンベルクによって示された不確定性関係の解釈や適用範囲についてもまた、ハイゼンベルクによる提案から現在に至るまで議論が続けられている。
◆ニールス・ボーアとアルベルト・アインシュタインの討論
特に有名な議論はニールス・ボーアとアルベルト・アインシュタインの討論であり、この議論はベルギーのブリュッセルにおいて1927年10月24日に開かれた第5回ソルヴェイ会議を始まり、1940年代の末まで断続的に続けられた。この議論の中ではまた、1935年にアインシュタインらによる実在性の定義が提示され、量子力学における実在性と局所性の研究が行われるきっかけとなっている。
◆量子力学の確立
前期量子論の、(ニュートン力学的な)粒子としての性質と(マクスウェルの電磁気学的な)波としての性質をもった量子という概念の発見であるとすれば、ハイゼンベルク、シュレーディンガー等による量子力学の基本方程式の構築は、ニュートンの運動方程式とマクスウェルの方程式を統合したものであるといえる。
◆ハイゼンベルクの行列力学
最初の統一的な量子力学の理論はヴェルナー・ハイゼンベルクによって与えられた。1925年、ハイゼンベルクはそれまでの量子論における状態の遷移に関する規則を一般化し、位置のような運動学的な量と、運動量のような力学的な量を結びつけた。このハイゼンベルクの方法は、マックス・ボルンとパスクアル・ヨルダン、ポール・ディラック、そしてハイゼンベルク自身によって発展され、同年の1925年に行列力学として定式化された。ハイゼンベルクらによって、量子力学は非可換代数として理解されるようになった。
◆シュレーディンガーの波動力学
ド・ブロイが提案した物質波の概念を発展させる試みから、ピーター・デバイの指摘に促され、シュレーディンガーは1926年にシュレーディンガー方程式を得た。同じく1926年に、シュレーディンガーはハイゼンベルクらによる行列力学と自身の波動力学の対応関係を示し、両者の理論が数学的に等価であることを示した。シュレーディンガーによって、ド・ブロイが描いた物質の波動的描像が明確に示された。しかしながら、当初ド・ブロイやシュレーディンガーが思い描いたような空間に広まった物質の波動という描像は、波動関数が配位空間上を動く波であって実空間上の波動ではないことなどから否定的に見られることとなる。
1926年のシュレーディンガーの発表を受けて、ボルンは同じ年に波動関数の確率解釈を提示した。ボルンが示した要請は今日、ボルンの規則と呼ばれる。
◆行列力学と波動力学
ハイゼンベルクらによって発展された行列力学と、シュレーディンガーらによって形成された波動力学は、いずれも演算子形式の非相対論的量子力学における特別な形式の一つである。時間発展の役割を演算子に負わせた形式をハイゼンベルク描像といい、ハイゼンベルク描像における量子力学の基本方程式をハイゼンベルクの運動方程式と呼ぶ。同様に状態ベクトルの時間発展として量子系を描く描像をシュレーディンガー描像といい、シュレーディンガー描像における基本方程式をシュレーディンガー方程式と呼ぶ。あるいは、状態ベクトルを固有状態で展開した際、その固有状態の係数として現れる波動関数の時間発展方程式もシュレーディンガー方程式と呼ばれる。本来、シュレーディンガーが見出した形式は波動関数に関するものである。
◆ハイゼンベルクの不確定性原理
1927年にはハイゼンベルクによって不確定性原理が示された。ボーアは、不確定性原理を基礎として量子力学の物理的解釈を構築し、相補性の概念を導入することで量子力学の物理的な基礎づけを試みた。
ボーアに始まる、不確定性と確率解釈を統合する物理的な描像はコペンハーゲン解釈として知られている。
量子力学の不確定性と確率解釈については、大きな議論が巻き起こった。
確率解釈を嫌ったアインシュタインは、「神はサイコロを振らない」という有名な言葉を残した。
ハイゼンベルクやシュレーディンガーらによって示された量子力学は非相対論的な理論であった。相対論的な量子力学の定式化は、シュレーディンガーが波動力学を模索するにあたり、非相対論的理論を構築する以前に試みられていたが、既存の結果に一致するものは得られていなかった。相対論的な形式として、1926年にクライン=ゴルドン方程式が示されたが、クライン=ゴルドン方程式はスピン角運動量を含まず、波動関数の確率解釈を適用するには、確率が負になるという困難があった。
◆ポール・ディラックの相対論的量子力学
1928年の1月にポール・ディラックはクリフォード代数を導入することにより、確率が負にならない相対論的量子力学を構成した。ディラックが導いた方程式はディラック方程式と呼ばれる。
1932年にはジョン・フォン・ノイマンらにより、量子力学の数学的に厳密な形式化(基礎)が確立された(『量子力学の数学的基礎』(1932) 他)。
◆量子力学の確立以降の発展
量子力学の定式化が行われるようになって、現代物理学では量子力学とアインシュタインの相対性理論が最も一般的な物理学の基礎理論であると考えられるようになった。その後、電磁相互作用、重力相互作用を量子力学に組み込むことが求められるようになった。それぞれ、特殊相対性理論や一般相対性理論と量子力学の橋渡しをしてひとつの定式化された理論を目指すことに相当する。
◆量子電磁力学(Quantum electrodynamics: QED)
1950年代にリチャード・ファインマン、フリーマン・ダイソン、ジュリアン・シュウィンガー、朝永振一郎らによって量子電磁力学が構築された。量子電磁力学(Quantum electrodynamics: QED)とは、電子を始めとする荷電粒子間の電磁相互作用を量子論的に記述する理論である。
◆量子色力学
さらに素粒子物理学の発展によって従来考えられていなかった電磁力や重力以外の基本相互作用が認められるようになった。量子色力学が研究されるようになり、1960年代初頭から始まる。今日知られる様な理論はデイヴィッド・ポリツァー、デイヴィッド・グロス、フランク・ウィルチェックらにより1975年に構築された。すべての基本相互作用を含む大統一理論の探求がおこなわれている。
◆電弱理論
これまでに、シュウィンガー、南部陽一郎、ピーター・ヒッグス、ジェフリー・ゴールドストーンらと他大勢の先駆的研究に基づき、シェルドン・グラショー、スティーヴン・ワインバーグ、アブドゥッサラームらは電磁気力と弱い力が単一の電弱力で表されることを独立に証明している(電弱理論)。
量子力学の成立によって物性物理学の発展に基づいた現代の工学の発展は可能になった。今日のIT社会ないし情報化社会と呼ばれる状況を成立させている電子工学も、半導体技術などが量子力学をその基盤としている。量子力学はまた化学反応の現代的な記述を可能にし、量子化学の分野が発展した。












