【宇宙の神秘】 「ダークエネルギー」 と観測的証拠
|
ダークエネルギー(dark energy )とは、現代宇宙論および天文学において、宇宙全体に浸透し、宇宙の膨張を加速していると考えられる仮説上のエネルギーである。
2013年までに発表された天文衛星プランクの観測結果からは、宇宙の質量とエネルギーに占める割合は、原子等の通常の物質が4.9%、ダークマターが26.8%、ダークエネルギーが68.3%と推定されている。

◆◇◆観測的証拠
現在、ダークエネルギーの存在は、主に以下の3つの観測手段によって支持されている。
◆◆超新星の観測
1990年代後半、ハイゼット超新星探索チームと超新星宇宙論計画の二つの国際的研究観測チームが、遠方のIa型超新星を観測することにより、宇宙が加速膨張をしていることを独立に相次いで立証した。現在の宇宙の全エネルギーの7割を、ダークエネルギーが占めるという観測結果は、大きな驚きをもって迎えられた。この発見の功績により、2011年ノーベル物理学賞は、ソール・パールマッター 、ブライアン・シュミット、アダム・リースの3者に贈られることになった。Ia型超新星とは、白色矮星を含む連星のうち、白色矮星がもう一方の星からの質量降着によりその質量が、チャンドラセカール限界に達した瞬間に超新星爆発が起きる現象をいう。
チャンドラセカール限界で白色矮星が超新星爆発する時の質量が、太陽質量の約1.4倍であり、光度がほぼ一定であることから、標準光源として距離の測定に使われている。
◆加速膨張の観測データ
パールムッター博士が率いる「超新星宇宙論プロジェクト」が発見した42個のⅠa型超新星から導かれた、宇宙の加速膨張を示すデータ。

▲ 「超新星宇宙論プロジェクトチーム」による42 個の遠方超新星データ
18 個の近くで起きた超新星のデータも同時にのせてある。横軸は後退速度を表す赤方偏移,縦軸は等級。点線と実線が,宇宙項や物質の量を変えた場合の理論曲線。実線のうち一番上にきているものが,ハッブルの法則,つまり等速膨張をする場合になっている。統計的にデータがこの実線より上にきている(暗く、遠い)ことから,宇宙の加速膨張が示された。(S.Perlmutter et al,Astrophysical Journal 517(1999) より引用)
タイプIa型超新星爆発の最大光度は、母銀河の光度に匹敵する明るさになるため、遠方銀河までの距離の測定が可能になった。ダークエネルギーの発見から10年、精度を上げる観測が精力的に行われ、現在までに700個以上の超新星の観測が報告され、さらに大規模な観測が計画されている。日本のすばる望遠鏡も、遠方の超新星の観測に貢献している。今日でも、暗黒エネルギーの最も正確な測定は、タイプIa型超新星によるものである。
◆◆宇宙背景放射の観測
宇宙背景放射の非等方性から、宇宙論パラメータを求めることができる。特に、宇宙の平坦性は主に宇宙背景放射の観測によるものであり、宇宙背景放射観測衛星WMAPは2001年の打ち上げ以来、高精度の宇宙論パラメータの決定を可能にし、大きな成果を上げている。WMAPの最新の宇宙背景放射の観測からも、ダークエネルギーの存在が強く支持されている。
【宇宙背景放射の観測史】
1989年から1996年にかけて行われたCOBE衛星ミッションはおそらく最も有名なものである。
◆◆COBE衛星ミッション

この衛星によって初めて、双極成分以外の大スケールでの非等方性が検出された。COBEの結果に触発されて、続く10年間に一連の地上もしくは気球を使ったCMB観測実験が行われ、より小さな角度スケールでの非等方性が測定された。これら実験の初期目標は、COBEで十分に分解できなかったパワースペクトルの最初のピークのスケールを測定することだった。これらの測定によって、宇宙における構造形成の理論として宇宙ひもを考える説は棄却され、インフレーション宇宙が正しい理論であることが示唆された。パワースペクトルの最初のピークは年々高い感度で測定され、2000年には南極の大気圏上層部での気球によるBOOMERanG実験によって、1度というスケールでゆらぎのパワーが最も高くなることが報告された。この結果と他の宇宙論の観測データを総合すると、我々の宇宙は平坦であるという結果が示唆された。その後2003年までに、カリフォルニア大学バークレー校のチームによるMAXIMAやVery Small Array、Cosmic Background Imagerといった多くの地上の干渉計によって、より高精度のゆらぎの観測が行われた。

▲COBE のデータから得られた CMB の非等方性の全天マップ
◆◆WMAP衛星
2001年6月、NASAは2機目のCMB観測ミッションであるWMAPを打ち上げた。これは全天にわたって大スケールの非等方性を、それまでよりも遥かに正確な測定を行なうことが目的であった。

2003年に公開されたこのミッションの成果は、パワースペクトルを1度以下のスケールまで詳細に測定したもので、これによって数多くの宇宙論パラメータに強い制限が与えられることとなった。この観測の結果は、多くの理論の中でもインフレーション宇宙論から期待される結果と広い範囲で良く合うものである。例えば、宇宙年齢は137±2億年、宇宙の物質・エネルギーの組成はダークエネルギー73%、ダークマター23%、バリオン4%などと求められている。WMAPはCMBの大きな角スケール(月の大きさ程度の構造)でのゆらぎについて非常に精密な測定を行ったが、地上の干渉計で行われた小さなスケールでのゆらぎについては測定していない。

▲WMAP で得られた宇宙マイクロ波背景放射の全天マップ
◆◆プランク Planck衛星
3機目の宇宙ミッションであるプランク衛星は2009年5月に打ち上げられた。この人工衛星はボロメータを搭載し、WMAPよりも小さなスケールでCMBを測定する。前の2機とは異なり、PlanckミッションはNASAとESAの共同ミッションである。プランク衛星による初期観測結果は、2013年3月21日に公開された。この結果、宇宙年齢は138億年、宇宙の物質・エネルギーの組成はダークエネルギー68.3%、ダークマター26.8%、バリオン4.9%であると求められた。

▲今回の「プランク」の観測研究から、宇宙の構成の割合が新しく求められた。(提供:ESA and the Planck Collaboration
◆欧州の天文衛星「プランク」の観測による初の宇宙マイクロ波背景放射の全天マップが発表された。【2013年3月】
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)とは、宇宙誕生からわずか38万年後に放たれた光の波長が伸びて現在マイクロ波として観測されるもので、誕生直後の宇宙に存在したわずかな密度のムラが反映されている。こうしたムラは宇宙誕生直後に起こった宇宙空間の急激な膨張(インフレーション)で大規模に広がり、その後恒星や銀河などの構造が生まれる種となっていると考えられている。
NASAのCMB観測衛星「COBE」や「WMAP」の後を継ぐべく
2009年に打ち上げられた欧州のプランクは、従来以上の高い解像度と感度でCMBの全容をとらえた。

1年あまりの観測から得られた今回の観測結果は、大枠では宇宙論の標準モデルを踏襲しているが、モデルでは予測されていなかったエネルギー分布の非対称性や模様も見られた。研究者らは今後「この観測結果に一致するようなモデルの構築を目指していく」(英ケンブリッジ大学のGeorge Efstathiouさん)こととなる。

▲天文衛星「プランク」による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の全天マップ。
標準モデルと合致しない温度分布の非対称性(カーブ線)や大規模な低温領域(白い囲み)が見られる(図では着色して強調)。過去の観測でも示唆されていたものが、今回はっきりと確認された。(提供:ESA and the Planck Collaboration)
また高精度な観測により、宇宙全体に関する様々な値も新しく求められている。
宇宙の年齢は、これまでより1億年古い138億歳となった。宇宙膨張の加速を示すハッブル定数は、67.15±1.2km/秒/Mpcに。これは、距離が1Mpc(メガパーセク:約326万光年)離れるごとに膨張速度が秒速67.15km大きくなる、ということを表しており、従来の値より遅くなっている。
宇宙の構成に占める物質やエネルギーの割合については、宇宙の加速膨張の元となるダークエネルギーが減り、逆に重力の元となるダークマターの割合が増加している。
◆◆バリオン音響振動の観測
バリオン音響振動とは、宇宙の晴れ上がりの際、後に銀河や星を構成することになるバリオンの共鳴していた距離が凍結され、銀河間の特徴的な距離がおよそ140メガパーセク (Mpc) (約4.57億光年)として銀河分布に刻まれる現象である。
我々からある距離に存在する明るい銀河の特徴的な分布を角度として測り、その角度をこの凍結された距離として解釈することにより、宇宙論パラメータを解くことができる。大規模な銀河探索であるスローン・デジタル・スカイサーベイのチームが、銀河の分布からバリオン音響振動の観測に初めて成功し、その結果は2005年に発表された。その後も検証が続けられ、最新の観測結果もダークエネルギーの存在を強く支持している。
◆SDSS-IIIのBOSSチーム、60億光年彼方の銀河までの距離を誤差1%で測定
【2014年1月】
観測プロジェクト「バリオン音響振動分光サーベイ」で、60億光年彼方の銀河までの距離を誤差1%の高精度で測定することに成功した。宇宙の膨張を加速させると考えられている謎のダークエネルギーの正体解明につながると期待される。

▲バリオン音響振動の波紋。
宇宙創成38万年後、電子と原子核が結びつき、密度のゆらぎが解放された光のわずかな温度のゆらぎ(左端:緑と赤の濃淡)として現れ、バリオン音響振動の波紋の大きさが約5億光年(150メガパーセク)として観測される。その後、数十億年かけて密度のゆらぎが銀河密度分布となる(右端)。銀河密度分布から波紋の大きさ(みかけの角度)を観測することにより、距離を知ることができる。宇宙の歴史の各時代(横軸:赤方偏移)ごとの波紋の大きさを調べることにより、宇宙膨脹の歴史を探ることができる。(Illustration courtesy of Chris Blake and Sam Moorfield)
米メキシコ州で行われている観測プロジェクト「バリオン音響振動分光サーベイ」(BOSS)で、60億光年彼方にある銀河までの距離を誤差1%の高精度で測定することに成功した。
これほどの高い精度で距離が測定できた天体は、従来は天の川銀河の中にある太陽から数千光年以内の星々だけだった。今回の測定は、「バリオン音響振動」と呼ばれる、宇宙に存在する銀河の分布に周期的に現れる波紋を測定するという新しい手法で実施された。
近傍(現代)から遠方(昔)までおよそ120万個の銀河の位置を測定し、その密度分布から波紋の大きさ(みかけの角度)を観測すると、銀河までの正確な距離がわかる。宇宙の歴史における各時代ごとの波紋の大きさを調べることにより、宇宙膨脹が時間と共にどのように変化してきたか、なぜ膨張が加速し始めたのか、手がかりを得ることができるという。

▲画像1:SDSS望遠鏡(Image courtesy by David Kirkby)
成果は、米・ローレンスバークレー国立研究所のデビッド・シュレーゲル氏ら国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、現地時間1月8日に米国ワシントンDCで開催中の米国天文学会においてに発表された。
宇宙では遠方になればなるほど地球からその天体までの距離を性格に求めることは難しくなる。しかし、距離さえわかればほかの物理量を推定することがとても容易になることから、距離の決定は非常に重要なのである。
これまで1%の精度で距離が測定できたのは、太陽の近傍にある数100の恒星や恒星の集まりのみだ。すべて我々の天の川銀河内の、数1000光年以内の距離にある星々である。BOSSプログラムでは、この星々の100万倍も彼方にある銀河までの距離を、これまでにない精度で測定し、宇宙地図を作製しているというわけだ。
この高精度の距離測定によって、BOSSチームは、宇宙膨張を加速させていると考えられており、全宇宙のエネルギー(質量も含む)の約70%に当たるとされる「ダークエネルギー」を探る新しい手がかりを手に入れることに成功したという。
SDSS-III のディレクターである米・ハーバード大学のダニエル・アイゼンスタイン教授によれば、「私たちはダークエネルギーのことをまだよくわかっていないが、その性質を測定することは可能です。測定した値を宇宙モデルから期待される値と比較することによって、私たちの宇宙モデルを検証することができるのです。さらに精度が上がれば、よりよく宇宙を理解することができるでしょう」とする。
60億光年彼方にある銀河までの距離を1%の精度で測定するためには、太陽系内の惑星や天の川銀河内の星々までの距離を測定するのとはまったく異なる手法を取り入れる必要があるのはいうまでもない。従来は、系外銀河までの距離は、Ia型超新星が用いられてきた。しかし今回ものさしとして利用されたのが、「バリオン音響振動」というわけである。

▲画像2:1000本のファイバー(赤と青)が焦点面にある板(プレート)に毎夜、手作業で銀河のある位置に正確に配置される。ファイバーは分光器につなげられ、一度に1000個の銀河のスペクトルを得ることができるというわけだ。これにより3次元地図を作製することができるのである。(Photo credit:Nao Suzuki)
BOSSは、SDSS-IIIを構成する4つのプロジェクトの内で最も大きな割合を占めており、宇宙に存在する銀河の分布に周期的に現れるわずかな波紋であるバリオン音響振動を測定するために計画された。バリオン音響振動とは、誕生間もない宇宙の中を駆け抜けていた音波の痕跡だ。
真空の宇宙空間でなぜ音波が発生するのかというのは疑問に思うところだろうが、それはビッグバンから間もない初期の宇宙が高温で密度が高かったため、気体や液体のように密度の波を伝えられたからである。宇宙は今から誕生後約38万年の時点で「宇宙の晴れ上がり」が起きるよりも以前は、まだ陽子や中性子で構成される原子核が電子をとらえて原子となっていなかったため、光は相互作用を受けて直進することができず、遠くへ届かなかった。その代わりに密度の波が伝播していっていたと考えられており、その密度の波の伝播をバリオン音響振動というわけだ。なおバリオンとは、陽子や中性子などを含む粒子の種類のことである。この宇宙初期の波紋の大きさ(宇宙マイクロ波背景放射のムラ)は、NASAが2001年に打ち上げた「WMAP衛星」などの観測により正確に知られている。
このバリオン音響振動を用いたものさしの目盛りは約5億光年で、宇宙の遥か彼方まで正確に距離を測るのに使うことが可能だ。ものさしが遠くにあれば目盛りがより小さく見えるという単純なからくりを使って遠方宇宙までの距離を測定するのである。
ただし今回の測定には、120万個の銀河の正確な地図を作製する必要があった。BOSSは、1000個の銀河の3次元の位置を1度に測定できる専用の装置を使っている(画像2・3)。SDSS-IIIの観測には、米国ニューメキシコ州アパッチポイントにある2.5m望遠鏡(画像4)が使われており、晴天ならすべてがうまくいけば1晩で8000個以上の銀河を地図に加えることが可能だという。

▲画像3:これまでに使われた画像2のプレートの数々。1枚1枚に天空の銀河の配置が正確に刻まれている。これまで数1000枚のプレートが使われ、宇宙地図を作り上げてきた(Photo credit:Nao Suzuki)
BOSSチームは、1年前に初期データからの銀河地図を発表していたが、今回の解析では前回の倍以上の領域を使ったことにより、より高精度の測定が可能になった。また新しいデータは、近傍から遠方までの宇宙の距離測定を可能にしている。測定を近傍と遠方で行うのは、宇宙膨張が時間と共にどのように変化してきたか、なぜ加速し始めたのか、手がかりを得ることができるからだ。
◆BOSSプロジェクトの銀河地図を使って、
アインシュタインの一般相対性理論を検証する研究
この銀河地図を使って、アインシュタインの一般相対性理論を検証する研究もカブリIPMUの斎藤俊特任研究員を含むBOSSプロジェクトチームによって行われた。
加速膨張する宇宙は、正体不明のダークエネルギーではなく、アインシュタインの重力理論の修正によって説明できるのではないのか? という疑問に答えるためだ。
斎藤研究員は、1億光年という大きなスケールで重力的に銀河がどう集まっているのかを観測し、「赤方偏移歪み」と呼ばれる効果を精密に測定して重力理論の検証を行った。斎藤研究員は今回の研究に対し、「地球上で物が落下するときの速さが地球による重力で決まるように、銀河がどのような速さで動いているかを見れば、重力法則について知ることができます。我々はBOSSの史上最大規模の3次元銀河地図を使って、1億光年のような大きなスケールで、アインシュタインの一般相対性理論をこれまでにない精度で検証することができました。赤方偏移歪みによる重力理論の検証は、宇宙加速膨張の謎に迫る上で、バリオン音響振動による距離測定とは相補的な役割を果たします」とコメントしている。なお今回の観測では、アインシュタインの重力理論に修正が必要な積極的な証拠は見つからなかったという。
現在のところ、BOSSプロジェクトの測定結果では、ダークエネルギーは宇宙誕生以来変化していない定数であることを示唆しているとする。この「宇宙定数」は、現在の宇宙の姿や大規模構造に合致する宇宙モデルに必要な6つの数字の1つだ。
前出のプロジェクトのリーダー・シュレーゲル氏は、この6つの数字のモデルをさまざまな観測という名のネジで留められた窓ガラスの枠組みに例える。「BOSSは今、最もキツく締めたネジの1つであり、今回さらに半回転キツく締めました。締め上げるごとにガラスに圧力がかかるはずですが、まだ壊れないということは、きっと我々の宇宙モデルが正しいということを示唆しているのかも知れません」としている。
◆ダイジェスト・ダークエネルギー
現代の物理学には、ダークマターと並んで、もう1つの大きな謎が立ちはだかっている。
それが「ダークエネルギー」である。
1920年代後半、それまで永遠不変のものだと考えられていた宇宙が、実は膨張していることが発見された。
1998年、宇宙が加速膨張をしていることが初めて発見された。
◆2011年のノーベル物理学賞が、遠方の超新星観測により宇宙の加速的な膨張を発見した研究者3名に贈られることが発表された。
137億年前のビッグバン以来私たちの宇宙が膨張し続けていることは、1929年からわかっていたが、その膨張の勢いが宇宙に存在する物質の重力によって衰えるどころか、むしろ加速しているということを示したのが今回の受賞者たちの功績だ。
受賞者は、Saul Perlmutter氏、Brian P. Schmidt氏、Adam G. Riess氏の3名で、Schmidt氏とRiess氏は共同チームとしての受賞となる。
▼ノーベル物理学賞を受賞した3氏。左からPerlmutter氏、Schmidt氏、Riess氏。

●Saul Perlmutter
1959年、米・イリノイ州生。カリフォルニア大学バークレー校博士号。「超新星宇宙論計画」代表。ローレンス・バークレー国立研究所およびカリフォルニア大学バークレー校宇宙物理学教授
●Brian P. Schmidt
1967年、米・モンタナ州生。アメリカ・オーストラリア国籍。ハーバード大学博士号。「遠方超新星捜索チーム」代表。オーストラリア国立大学特等教授
●Adam G. Riess
1969年、米・ワシントンDC生。ハーバード大学博士号。ジョンズ・ホプキンズ大学および宇宙望遠鏡科学研究所宇宙物理学教授
この発見には、Ia型超新星と呼ばれる天体がかぎとなった。Ia型超新星とは、白色矮星と呼ばれる星の燃えかすのような高密度の天体が、核反応が暴走することで爆発して明るく見える天体だ。ピーク時の明るさがどれも同じであるため、地球からの見かけの明るさと比較することで距離を測定することができる。
3氏のチームは1998年、この原理を利用して、宇宙空間が加速的に膨張していることの観測的な証拠を見出した。もともとは膨張速度の衰えを計測するつもりで観測を行っていたので、この研究結果は当時衝撃的なものだった。
◆ダークエネルギーの斥力
宇宙が加速度的に膨張していることの説明として、物体同士を遠ざけ空間を広げる斥力(物質同士を引き合わせる「引力」とは反対に、物質同士を引き離す力)を生む「ダークエネルギー」が提唱されており、宇宙の全エネルギーの約4分の3を占めているとする説が現在主流である。
宇宙に存在するあらゆる物質の重力に逆らって、宇宙空間を外へ外へとどんどん膨張させていく力はいったい何なのか。
この宇宙空間を外側へとおし広げる斥力として「ダークエネルギー」の存在が提唱された。
ダークエネルギーがいったいどこからきたのか、どのような性質をもっているのかについて、確かなことはわかっていない。
その一方で、ダークエネルギーは宇宙の未来をにぎるカギとして注目されている。
ダークエネルギーの性質によって、宇宙の未来は大きく左右されることになると考えられているのだ。
◆宇宙の未来とダークエネルギー
ダークエネルギーの密度が、今後どのように変化するかによって、宇宙の未来は大きく変わってくる。
現在とかわらず、密度が一定のままであれば、宇宙はこれまでどおりの膨張をつづける。
しかし、密度が下がれば、宇宙は収縮に転ずるし、反対に密度が上がれば、宇宙は現在の加速膨張をはるかに凌ぐ勢いで膨張すると考えられる。













