【ハッブル宇宙望遠鏡】 歴史とサービスミッションと観測成果
|

ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope、略称:HST)は、地上約600km上空の軌道上を周回する宇宙望遠鏡であり、グレートオブザバトリー計画の一環として打ち上げられた。名称は宇宙の膨張を発見した天文学者・エドウィン・ハッブルに因む。
長さ13.1メートル、重さ11トンの筒型で、内側に反射望遠鏡を収めており、主鏡の直径2.4メートルのいわば宇宙の天文台である。大気や天候による影響を受けないため、地上からでは困難な高い精度での天体観測が可能。

▲スペースシャトル ディスカバリー号から見たハッブル宇宙望遠鏡(1997年2月サービスミッションSTS-82での画像)
◆ハッブル宇宙望遠鏡は、地球の周回軌道にのせられた望遠鏡の中では、一番成功をおさめたものだろうと言われている。
ハッブル宇宙望遠鏡が行う観測のほとんどは、目で見える光の波長を使う。そのため、望遠鏡を地球の大気の上に置く最も大きな利点は、シーイングによる歪みを受けないことである。また、観測する天体を細かなところでまで明らかにすると同時に、光を狭い範囲へ集めることで暗い天体まで観測することができる。
望遠鏡の大きさは、バスほどもある。また、これまでにスペースシャトルが何度かこの望遠鏡を訪れ、宇宙飛行士が観測装置を補修したり、新しいカメラや分光器を取り付けるなどしてきた。

◆◆光学系の不具合の修理と機能向上のサービスミッション
1990年にスペースシャトル・ディスカバリー号によって幾度の打ち上げ延期を乗り越え、満を持して打ち上げられた。しかし打ち上げ直後の調整で天体の光を集める鏡の端が設計より0.002mm平たく歪んでいることが発覚。この誤差により分解能は予定の5%になってしまった(ただし5%でも地上の望遠鏡より遥かに高い分解能を有していた)。
この歪みは、主鏡を製造したパーキンエルマー社(現レイセオン・ダンバリー社)の工場において鏡面の歪みを検出するヌル補正装置が正しく取り付けられていないことが原因だった。本来小型の鏡の歪みを検出する用途に使われていたこの装置を、2.4mの大型鏡の補正に用いるために無理に取り付けたことが歪みを生む結果につながったのである。
この問題を修正するために、焦点に入ってくる15%の光を最大限に利用するソフトウェアが開発された。これで性能は58%まで回復。これ以上の修復は直接宇宙へ行き、ハッブルを修理するしかなかった。
元々ハッブルは運用期間15年(当初の予定)の間に数回スペースシャトルからサービスミッション(修理・機能向上)などを受ける予定だったので、NASAはこの修理に鏡の誤差を修正する光学系の装置を入れる事を急遽決定。この修理に伴う船外活動のため、宇宙飛行士たちは一年以上、延べ400時間に及ぶ訓練を受けることとなる。この訓練のおかげで、この大修理は無事成功。
▼第1回目のサービスミッション

▼第1回目のサービスミッション前後の比較。格段に像が鮮明になっている。

▼第3回目のサービスミッション

▼最後の第5回目のサービスミッション

▼修理作業中の宇宙飛行士

結果、ハッブルは当初の予定を遥かに超える性能を手にし、天文学史に残る数々の貴重な天体写真を捉えている。また、非常に美しい芸術的な天体写真も多数公開されている。なお、これらの写真は必ずしも本物の色ではないことがある。肉眼では見えない領域の光(赤外線、紫外線など)を撮影した場合は、擬似カラーと呼ばれ、わかりやすいように波長ごとに色付けするためである。
◆◇◆観測成果
◆シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突する様子を克明に捉えた。
(1994年)
▼ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したシューメーカー・レヴィ第9彗星

▼木星に残った衝突痕

◆太陽系外の恒星の周りに惑星が存在する証拠を初めて得た。
◆銀河系を取巻くダークマターの存在を明らかにした。

◆宇宙が加速膨張しているという現在の宇宙モデルはハッブル宇宙望遠鏡の観測結果によって得られた。

Image: Nasa STS-103
◆多くの銀河の中心部にブラックホールがあるという理論は、ハッブル宇宙望遠鏡の多くの観測結果によって裏付けられている。

◆1995年12月18日~28日、
おおぐま座付近の肉眼でほとんど星のない領域について十日間に亘り観測を行い、
「ハッブル・ディープ・フィールド」と呼ばれる千五百~二千個にも及ぶ遠方の銀河を撮影した。
▼ハッブル・ディープ・フィールド (Hubble Deep Field )

これに続き、南天のきょしちょう座付近において
「南天のハッブル・ディープ・フィールド」 (Hubble Deep Field - South) 観測を行った。 双方の観測結果は非常に似かよっており、宇宙は大きなスケールに渉り均一であること、地球は宇宙の中で典型的な場所を占めていることを明らかにした。

▼南天のハッブル・ディープ・フィールド (Hubble Deep Field - South)

◆2011年12月、科学誌に投稿された論文が21年間で10,000件に到達
◆◆ハッブル宇宙望遠鏡の歴史
◆1990年4月24日:
スペースシャトル ディスカバリー号によって打ち上げられる (STS-31) 。

▲Space shuttle Columbia on Pad 39A "watches" the picture-perfect ascent of sister ship Discovery during its liftoff on STS-31. The launch pads are separated by 1.6 miles. Discovery, carrying a five-member crew and the Hubble Space Telescope, lifted off at 8:34 a.m. EDT.
Image credit: NASA April 24, 1990

▼The Hubble Space Telescope, moments after release from the shuttle Discovery on April 25, 1990./ NASA

◆1993年12月:初のサービスミッション(修理と機能向上) (SM1) (STS-61) 。
球面収差修正用の光学系であるCOSTAR(Corrective Optics Space Telescope Axial Replacement)を設置。これにより鮮明な画像が得られるようになった。WF/PCの代わりに、WFPC2(Wide Field Planetary Camera 2)を設置。また、太陽電池パネルの交換も行なった。

▲球面収差修正用の光学系であるCOSTAR(Corrective Optics Space Telescope Axial Replacement)を設置 Credit:NASA/ESA
◆1997年2月:2度目のサービスミッション (SM2) (STS-82) 。
FOS(Faint Object Spectrograph)の代わりにNICMOS(近赤外カメラ及び多天体分光器:Near Infrared Camera and Multi-Object Spectrometer)や、GHRS(Goddard High Resolution Spectrometer)の代わりにSTIS(宇宙望遠鏡撮像分光器:Space Telescope Imaging Spectrograph)の設置などを行った。

▲STIS(宇宙望遠鏡撮像分光器:Space Telescope Imaging Spectrograph)

▲1997: NICMOS (Near Infra-Red Camera and Multi-Object Spectrometer) is attached to the Hubble Space Telescope in February 1997. This infrared instrument, consisting of three cameras and three spectrometers, provides spectra and high resolution images in the near-infrared.
◆1999年11月25日:6台ある姿勢制御用ジャイロスコープのうち4台目が故障し、観測不能に陥る。
◆1999年12月:3度目のサービスミッション (SM3A) (STS-103) 。
ジャイロスコープ6台全てを交換、主コンピュータの交換など。

◆2002年3月:4度目のサービスミッション (SM3B) (STS-109) 。
新型メインカメラACS (掃天用高性能カメラ:Advanced Camera for Surveys) の取り付け(FOC(Faint Object Camera)と交換)、太陽電池パネルを新型のものに交換、NICMOSの冷却装置の設置など。

▲新型メインカメラACS (掃天用高性能カメラ:Advanced Camera for Surveys)
◆2004年1月16日:アメリカ航空宇宙局 (NASA) は今後、ハッブル宇宙望遠鏡の修理を行なわないと発表。予定されていた5度目のサービスミッション (SM4) は中止された。
◆2006年6月25日:
新型メインカメラACSが故障。同年6月30日に復旧。
◆2006年10月31日:
方針を転換し、5度目のサービスミッションを行い、2013年まで利用を続けるための修理を行うことがNASAより発表された。
◆2007年1月23日:ACSが再度故障。
同年2月19日になって一部機能の復旧に成功したものの、主要機能の復旧は絶望的である。WFPC2などの旧型機器は動作し続けているため、機能は劣るものの代用が可能。
◆2009年5月11日:
最後の5度目のサービスミッション (SM4) (STS-125)。
WFPC2をWFC3(Wide Field Camera 3)へ交換、故障したACSとSTISの修理、COS(Cosmic Origins Spectrograph)の設置、ジャイロとバッテリーの交換など大幅な修理を行う。ハッブルは「今までで最高の性能」(NASA)になり、少なくとも2014年まで寿命が延びる。ミッションは無事完了し、4ヶ月間のテスト期間を経て活動を再開。

▲WFC3(Wide Field Camera 3)

▲COS(Cosmic Origins Spectrograph)
▼Hubble has benefited from five servicing missions. Each of which were carried out by NASA’s now-retired fleet of shuttle orbiters. (Click to enlarge) Photo Credit: NASA

▼最後の5回目のサービスミッションでの作業

▼ハッブル宇宙望遠鏡


▲The Hubble Space Telescope recedes after release from the shuttle Atlantis following a fifth and final servicing mission./ NASA
◆このSTS-125ミッションで地上に回収されたWFPC2とCOSTARは、2014年4月からスミソニアン博物館で展示を始めた。2009年7月24日:本格稼動前であるが、木星への天体衝突跡が発見された為に新しく取り付けられたWFC3で衝突跡を撮影・SM4終了後の画像を初公開した。
▼Hubble’s WFPC-2, now on display at Air and Space Picture copyright Smithsonian Institution

▼COSTAR Picture by Eric Long/NASM

▼ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたりゅう座の衝突銀河Arp81

りゅう座の衝突銀河Arp81は、地球から2億8000万光年離れた所にある。Arp81は、左側の銀河NGC6622と右側の銀河NGC6621の同じくらいの大きさの二つの巨大銀河が1億年前に接触したためこのような姿になっている。
この二つの銀河は、更に長い年月を経て一つの銀河になると考えられている。
Arp81のバックグラウンドには、更に遠くにある銀河が見える。
▼ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた宇宙

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた宇宙: 左上:おたまじゃくし銀河 Arp188、右上:コーン星雲 NGC2264、左下:オメガ星雲 M17 での恒星の誕生、右下:融合銀河 NGC4676
NASA, H. Ford (JHU), G. Illingworth (USCS/LO), M.Clampin (STScI), G. Hartig (STScI), the ACS Science Team, and ESA
◆◆ハッブル望遠鏡がとらえた美しい魅力的な宇宙画像






















