【フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡】 観測成果 その1
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以前は Gamma-ray Large Area Space Telescope (GLAST) と呼ばれていた。ガンマ線検出器として大面積望遠鏡 (LAT) とガンマ線バーストモニター (GBM) の2つを搭載する。

▲2008年5月にケープカナベラルに到着したGLAST
2008年6月11日 16:05 GMTにデルタII7920-H ロケットでNASAによって打ち上げられ、2008年8月から運用が開始された。アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スウェーデンの政府機関、研究組織による共同研究である。

▲デルタ IIロケットで2008年6月11日に打ち上げられた。
2008年2月8日にNASAはGLASTに新名称をつける事を提案し、
2008年8月26日に Fermi Gamma-ray Space Telescope と改名した。
フェルミ望遠鏡は、2013年8月11日に当初予定していた5年間の観測ミッションを終了し、
2018年まで観測を続ける延長ミッションに移行した。
この5年間で、1,200以上のガンマ線バースト、500回以上の太陽フレアを観測した 。
概要
フェルミ望遠鏡は、大面積望遠鏡 (LAT) とガンマ線バーストモニター (GBM) という2つのガンマ線観測装置を搭載している。LAT は 20 MeV から 300 GeV 以上のエネルギー帯域を覆う、高エネルギーガンマ線の検出・撮像装置である。全天の約20%の視野を持ち、掃天観測を行うことを目的としている。活動銀河、超新星残骸、パルサーのような高エネルギーガンマ線天体に加え、暗黒物質、宇宙線、星間物質も研究対象である。これとは相補的に、GBM は 8 keV から 30 MeV のエネルギー帯域でガンマ線バーストのような突発天体の観測を行う。

▲ガム星雲のガンマ線パルサー、フェルミの広角望遠鏡で検出された光子から構成
検出器
LAT
コンプトンガンマ線観測衛星に搭載されたEGRETの後継である。

GBM
GBMは14のシンチレーション検出器(12個のヨウ化ナトリウム結晶で8keV~1MeV、2個のビスマスゲルマニウム結晶で150keV~30MeVのバーストを捉える)と地球上では捉えることのできない帯域のガンマ線バーストを捉える。

◆◆フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡
観測成果 その1
【2008年8月】
「フェルミ」、ファーストライト ガンマ線で見た全天画像を公開
6月に打ち上げられたNASAの国際ガンマ線天文衛星「GLAST」が2か月間の観測機器の試験を終了し、そのファーストライト画像が公開された。NASAは画像公開と同時に、同衛星の名前を「GLAST」から、「フェルミ・ガンマ線天文衛星(Fermi Gamma-ray Space Telescope)」に改名したと発表した。
▼フェルミガンマ線宇宙望遠鏡で検出されたガンマ線パルサーの分布

フェルミ・ガンマ線天文衛星には、広域望遠鏡(LAT)とバーストモニター(GBM)が搭載されている。GBMは、すでに31のガンマ線バーストを検出している。公開された画像は、95時間かけて行われたLATのファーストライトで得られたものだ。天の川銀河の銀河面に存在するガスやちり、かに星雲(M1)など3つのパルサー、さらに数十億光年離れた銀河が、ガンマ線の波長で明るく輝いている。
画像に見られるほ座パルサーやかに星雲の中心にあるパルサーの正体は、大質量星が超新星爆発を起こした後に残された磁場の強い中性子星である。2つの天体はともに電波を放射していたことから発見された。しかし、ふたご座のパルサー「ゲミンガ」は一風変わっている。実は、そのエネルギーのほとんどを電波ではなくガンマ線で放射しているのだ。フェルミ・ガンマ線天文衛星によって同様の天体が発見されれば、その放射メカニズムが明らかにされるかもしれない。
また、3C454.3は、ブラックホールをエネルギー源とする銀河中心核のなかでも、とくに強力な「ブレーザー」と呼ばれる種類の天体である。この天体では現在、突発的な爆発現象が進んでいて、画像中ひときわ明るく輝いている。
【2008年10月】
ガンマ線だけを放つパルサー
これまでパルサーは電波を規則正しく放つ天体として知られていたが、NASAのガンマ線天文衛星フェルミの観測で、ガンマ線の信号しか見せないパルサーが発見された。似たような天体は数多く隠れている可能性がある。
ケフェウス座の方向約4,600光年の距離にあるCTA 1は、1万年ほど前に起きた超新星爆発の残骸だ。ガンマ線天文衛星フェルミは、ここに約0.3秒(316.86ミリ秒)周期で規則正しくガンマ線を地球へ放つ「パルサー」を発見した。

▲超新星残骸CTA 1とパルサーが見つかった位置(中央左寄り)、およびパルサーの想像図。パルサーの磁力線(青)に沿って動く荷電粒子がガンマ線(紫)を生み出している。クリックで拡大(提供:NASA/S. Pineault, DRAO)
超新星爆発のあとには高密度の天体である中性子星が残されることが多いが、そのうち1,600個ほどが「パルサー」として観測されている。中性子星は強力な磁場を持ち、磁極の方向からは電磁波のビームが放たれている。さらに、中性子星は超高速で自転しているため、電磁波のビームは灯台のように回転することになる。離れたところからは規則正しく明滅する電磁波の信号(パルス)が観測されるため、パルサーという名前がついた。
【2009年2月】
記録的規模のガンマ線バーストを観測
NASAのガンマ線天文衛星フェルミが、超新星爆発約9000個分以上という大きなエネルギーを放つガンマ線バーストを観測した。
ガンマ線天文衛星フェルミは、2008年9月15日午後7時13分(米国東部時間)に、りゅうこつ座の方向で発生したガンマ線バースト「GRB 080916C」を観測した。

ガンマ線バーストは、宇宙で起きる最大規模の爆発現象である。その多くは大質量星が重力崩壊を起こしてブラックホールが生まれるときに伴うものだと考えられている。放出されるジェットの速度は光速に近く、爆発前に星が放出したガスと作用するため、爆破後もさまざまな波長の電磁波でしばらく残光が見られる。
独・マックス・プランク研究所のJochen Greiner氏が率いるチームは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の2.2m望遠鏡に搭載された検出器GROUNDを使ってGRB 080916Cの残光を観測し、ガンマ線バーストが122億光年の距離で起きたことを明らかにした。
また、爆発のエネルギーは、全方向へ均等に広がったと仮定すれば、平均的な超新星爆発9000個分以上になること、ジェットとなって噴出したガスの速度は、光速の99.9999パーセントと計算された。どちらもこれまでに観測されたガンマ線バーストとしては最大級だ。
【2009年12月】
ガンマ線の目で「マイクロクエーサー」を見る
NASAのガンマ線天文衛星フェルミが、強いX線源として知られる連星系「はくちょう座X-3」を観測し、高エネルギーのガンマ線を検出した。はくちょう座X-3の伴星の正体はブラックホールまたは中性子星がガスを吸い込んでエネルギーを生み出す、「マイクロクエーサー」ともよばれる天体だ。
「はくちょう座X-3」は、主星が大質量の恒星、伴星がブラックホールまたは中性子星の連星で、マイクロクエーサーの1つである。マイクロクエーサーは、巨大ブラックホールの活動によると思われる電波ジェットと、広範囲の波長にわたる強いエネルギーを放出し、急激な明るさの変化を見せるという特徴を持つ天体だ。
はくちょう座X-3は、強いX線源として1996年に発見された当時から、ガンマ線も放射しているのではないかと考えられてきた。発見から10年以上経過した今になり、ついにガンマ線天文衛星フェルミがガンマ線の放射を検出した。

▲「はくちょう座X-3」の想像図。青が主星、紫色が伴星の円盤。クリックで拡大(提供:NASA's Goddard Space Flight Center)
はくちょう座X-3の主星は、表面温度が10万度もある大質量星だ。この星からは物質が恒星風となって宇宙空間へ放出されている。そのまわりを、主星から流出する物質を引き寄せて円盤を形成した伴星が、4.8時間の周期で回っている。

▲ガンマ線天文衛星フェルミが検出したガンマ線。囲みで示された「はくちょう座X-3」周辺の拡大図中、白い丸がはくちょう座X-3、斜め上と横に見えている明るい天体はパルサー。クリックで拡大(提供:NASA/DOE/Fermi LAT)
フェルミによる観測で、はくちょう座X-3から放射されるガンマ線の強さが伴星の公転に伴って変化していることがわかった。伴星が主星の奥にあるときにガンマ線が明るくなったのだ。
このガンマ線は、伴星の円盤面の上下に発生した電子が恒星からの紫外線の光子に高速でぶつかることで発生するものと考えられるが、伴星が地球から見て公転軌道上の向こう側に来たときに特に明るくなる理由について、仏・グルノーブル天体物理研究所のGuillaume Dubus氏は「円盤からの電子と恒星からの紫外線が正面衝突して発生した強力なガンマ線が地球に届くため」と説明している。
伴星の高密度天体に引き寄せられたガスの一部が、細いジェットとなって光速の半分以上のスピードで円盤の両軸方向に放出されているが
【2010年3月】
「フェルミ」、銀河宇宙線の姿や新種のガンマ線天体候補に迫る
日本の研究者を含む共同研究チーム3つが、それぞれNASAのガンマ線天文衛星フェルミによる観測やデータの分析を行い、天の川銀河の外側に満ちる宇宙線や、超新星残骸によって加速され拡散したと考えられる宇宙線のようす、さらに「りゅうこつ座η(エータ)星」が新種のガンマ線天体である可能性などを明らかにした。
天の川銀河は外側も高エネルギーで満ちていた
「宇宙線」とは、宇宙空間をほぼ光の速さで飛び回る高エネルギー粒子の総称で、地球にもたえず降り注いでいる。エネルギーの低いほうから、太陽を起源とする「太陽宇宙線」、太陽系外縁部で発生すると考えられている「特異宇宙線」、超新星残骸や中性子星、活動銀河核などを起源とする「銀河宇宙線」や「銀河系外宇宙線」に分けられる。

▲銀河系の概念図。三角形が観測された領域。クリックで拡大(提供:広島大学理学部物理化学科 水野恒史氏(背景の銀河系の想像図:NASA/JPL/Caltech))
宇宙線の総エネルギーは宇宙背景マイクロ波放射や星の光のエネルギーをも上回ると見積もられており、天の川銀河の主要な構成要素といえる。
電波観測によって、銀河宇宙線の源とされる超新星残骸は天の川銀河の中心に集中していることがわかっている。そのため、宇宙線の強度は天の川銀河の外側では急激に下がると考えられてきた。
この仮説を確かめる目的で、日本フェルミチームを含む研究チームはガンマ線天文衛星フェルミを使って、(ガンマ線で明るい天体にじゃまされない領域を選び)太陽系の外側にある約1万光年の以上先までの領域を過去最高の感度で観測した。
その結果、予想以上に強いガンマ線が検出され、天の川銀河の外縁部まで高エネルギーの宇宙線で満ちていることが明らかとなった。
超新星残骸で加速され、拡散する宇宙線をとらえた?
宇宙線は、宇宙空間から地球に絶えず降り注いでいるが、どこでどのように加速され、どのように拡散して地球に届いているのかは解明されておらず、大きな謎となっている。
宇宙線を加速するもっとも有力な候補として、星が一生を終える際の大爆発である超新星爆発で発生する衝撃波があげられている。
広島大学、米・国立加速器研究所(SLAC)、名古屋大学を中心とする研究グループは、超新星残骸W28の周辺の分子雲(密度の高いガス)2つから放射されるガンマ線を観測した。その結果、超新星残骸で加速された宇宙線が宇宙空間に放出され拡散していくことを示唆する結果が得られた。

▲W28周辺のガンマ線の強度分布(白い破線:衝撃波面、黒の等高線:一酸化炭素分子からの電波強度=星間ガスの密度)。クリックで拡大(提供:フェルミ衛星チーム、名古屋大学NANTENチーム)
観測されたガンマ線は、超新星爆発で発生した衝撃波の中で加速された宇宙線が、周辺の密度の高いガス(分子雲)中の原子と反応して放射されたものと考えられている。
画像中、分子雲「N」には衝撃波が到達(衝突)していると考えられる。「N」でとらえられたガンマ線は、衝撃波中の宇宙線と分子雲が反応して放射されたものと考えられる。一方、分子雲「S」には衝撃波が到達していないにも関わらずガンマ線が観測されている。ひとつの解釈として、衝撃波から放出され拡散した宇宙線と分子雲が反応して放射されたガンマ線だという可能性がある。
この研究によって、宇宙線の拡散過程を理解する上での有用なデータが得られた。地球に届く大半の宇宙線がどこでどのように加速されているのかという大問題を解明するために
新種ガンマ線天体か?りゅうこつ座η星
「りゅうこつ座η(エータ)星」は、地球から約7500光年の距離に位置する銀河系内でもっとも重い恒星だ。質量は太陽の100倍もあり、太陽の数十倍の質量をもつ伴星と連星系をなしている。
広島大学 宇宙科学センターの特任助教 高橋弘充氏らの研究グループは、ガンマ線天文衛星フェルミが集めた過去1年のデータを分析し、りゅうこつ座η星が伴星との相互作用によってガンマ線を放射している可能性を明らかにした。

▲ガンマ線で撮影されたりゅうこつ座η星(緑の十字)。クリックで拡大(提供:フェルミ・ガンマ線衛星チーム)
太陽フレア以外の現象で、恒星からガンマ線が検出された例はこれまでにない。また、観測されたガンマ線放射の最高エネルギーは、太陽フレアのガンマ線の1000倍以上である1000億電子ボルトにも達していることがわかった。

▲りゅうこつ座η星と伴星の想像図(オレンジ:互いの星風が衝突している場所、黒線:伴星の公転軌道)。クリックで拡大(提供:広島大学)
太陽フレアよりもはるかに高いエネルギーのガンマ線が恒星から放射されていることが確実になれば、新種のガンマ線天体の発見となる。
これほど高いエネルギーのガンマ線が放射される理由は、りゅうこつ座η星と伴星それぞれから放出された星風が激しく衝突することでガンマ線が生成されているためではないかと考えられている。
りゅうこつ座η星ほど重くはないものの、恒星どうしの連星系は銀河系内に多く存在している。研究チームでは、そのほかの恒星もガンマ線を放射しているのか、またその放射メカニズムはどのようなものかを明らかにするため、今後もフェルミのデータをもとにした研究を進める。
【2010年4月】
電波銀河の外側の巨大構造からガンマ線を発見
NASAのガンマ線天文衛星フェルミが有名な電波銀河ケンタウルス座Aの外側に広がる巨大な構造を観測し、ガンマ線の放射を発見した。この構造内では、激しい爆発や衝突といった既知のプロセスとは異なるかたちで、高エネルギー粒子が加速されているようだ。
ケンタウルス座A(NGC 5128)は、ケンタウルス座の方向約1200万光年の距離にある電波銀河だ。銀河の中心には太陽の約1億倍もの質量を持つ大質量ブラックホールが存在している。その活動によって、銀河の円盤に垂直な方向に高速の粒子が噴き出し、100万光年もの長さに伸びる両極ジェットとして観測されている。

▲可視光で見たケンタウルス座A(NGC 5128)。クリックで拡大(提供:Capella Observatory)
ケンタウルス座Aの外側には、このジェットによって形成されたと考えられている構造がある。電波で明るく輝いているため「電波ローブ」と呼ばれているが、その大きさは約200万光年で、銀河本体の50倍以上もある。
日本の研究者を含む研究チームがNASAのガンマ線天文衛星フェルミを使ってこの電波ローブを観測した結果、高エネルギーのガンマ線が検出された。このガンマ線は、数千億電子ボルト(電子ボルト:電子を1ボルトの電圧で加速したときに得られるエネルギー)もの高エネルギー電子が、宇宙空間を満たしているマイクロ波(宇宙マイクロ波背景放射)を散乱することで生成されたものであることがわかった。

▲ケンタウルス座A(NGC 5128)の電波ローブ(銀河の可視光画像にフェルミがとらえたガンマ線データを重ね合わせた画像)。クリックで拡大(提供:NASA/DOE/Fermi LAT Collaboration, Capella Observatory, and Ilana Feain, Tim Cornwell, and Ron Ekers (CSIRO/ATNF), R. Morganti (ASTRON), and N. Junkes (MPIfR)
このような高エネルギー粒子が作られている場所の候補としては、ケンタウルス座Aのジェットの根元付近が挙げられる。この付近には強いX線やガンマ線を放出している「ホットスポット」と呼ばれる領域があり、ここでは超高速のジェットがつくる衝撃波によって電子などの粒子が加速されている。しかし、このような高エネルギーの電子は長い距離を飛ぶ間にエネルギーを失ってしまうため、ケンタウルス座Aの中心で加速された電子がガンマ線を放出できるような高いエネルギーを持ったまま、100万光年以上の範囲にわたって広く分布するとは考えにくい。よって、この電波ローブに含まれている高エネルギー電子は、ジェットの根元ではなく電波ローブの中でたえず加速・生成されていることになる。
これまでに知られている高エネルギー宇宙線加速天体は、数光年以下の大きさで、(前述の)ジェットの根元、パルサーやガンマ線バースト、超新星残骸など、いずれも激しい爆発や衝突などを伴うものであった。ケンタウルス座Aの電波ローブでは、構造自体はゆっくり膨張をしているものの、激しい爆発や衝突は起きていない。銀河の外側の空間で、従来の加速天体とは異なるプロセスで、高エネルギー粒子がつくられている可能性が強く示唆された。
【2010年10月】
原初の宇宙に満ちていた磁場を発見か
最新の研究で、地球の磁場の10の15乗分の1というきわめて微弱な磁場が深宇宙の銀河間に広がっていることが示された。このような磁場はビッグバンの直後から宇宙を満たしていた可能性があり、宇宙における磁場の起源解明につながるかもしれない。
原初の宇宙に磁場が存在し、現在わたしたちが知っている成熟した銀河の磁場ももとは初期宇宙の微弱な“種”磁場から発達したのではないかと長い間考えられている。しかし、これまでにそのような深宇宙に広がる磁場を観測する方法はなく、計測が試みられたこともなかった。
米・カリフォルニア工科大学の物理学者 安藤真一郎氏と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の宇宙物理学教授Alexander Kusenko氏は、NASAのフェルミ・ガンマ線天文衛星が撮影した170個の巨大ブラックホール画像が予想以上に鮮明でないことに気がついた。

▲巨大ブラックホールに物質が落ち込むことによってガンマ線など高いエネルギーが放射されている活動銀河核の想像図(提供:NASA)
その理由についてKusenko氏は「この宇宙はビッグバンのなごりである宇宙背景放射で満たされています。同時に銀河からの放射も存在します。銀河の中心にある巨大ブラックホールの活動で放出された高エネルギー光子が背景放射の光子と作用して電子と陽電子のペアになり、のちにそれらが再び作用を起こして光子のグループに変わるのです。このプロセス自体は画像をそれほどぼやけさせることはないのですが、小さな磁場であっても途中で電子と陽電子を偏向させるため、画像が不鮮明になるのです」と話している。
安藤氏とKusenko氏は、画像のぼやけ具合から磁場の強さを計算した。その結果、磁場は平均で地球の磁場の10の15乗分の1ほどであることが示された。この宇宙における最初の磁場はビッグバン直後に形成された可能性がある。この研究成果は宇宙における磁場の起源解明につながるかもしれない。












