【HETE -2 (高エネルギートランジェント天体探査機)】
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主な目的は紫外線、X線、ガンマ線を用いたガンマ線バーストの多波長観測。
1号機が打ち上げに失敗したため、1号機のフライトスペアー品を用いた2号機が打ち上げられた。
▼HETE-2

最大の特徴は、HETEがガンマ線バーストを検出した際、その観測結果が直ちに赤道上に配置した地上の受信局に送られる事である。計画はマサチューセッツ工科大学が主導した。
HETE-1
HETE-1は1996年11月4日、アルゼンチンの SAC-B衛星とともに、バージニア州のWallop島からペガサスロケットにより打ち上げられた。ロケットは予定した軌道に達したが、ロケットの第3ステージのバッテリーに不調があり、爆薬ボルトが作動せず、2つの衛星は打ち上げに失敗した。
HETE-2
HETE-2は2000年10月9日に打ち上げられた。
HETE-1とよく似ていたが、紫外線カメラが取り除かれ、軟X線カメラが取り付けられた。
これは当初からある広視野X線モニターより高精度でバーストの位置検出ができた。別名エクスプローラー79号。
運用終了は2007年3月末。
◆ガンマ線バースト観測衛星 HETE-2 打ち上げ成功
【2000年10月】
10月10日、日本・アメリカ・フランス共同のガンマ線バースト観測衛星「HETE-2」を積載したオービタルサイエンス社製ペガサス・ロケットが打ち上げられた。これによりペガサス・ロケットは通算30回目の打ち上げ成功、1996年以降18回連続での打ち上げ成功となった。ペガサス・ロケットは、高空で航空機の胴体下から水平発射されるユニークな小型衛星打ち上げ用ロケットである。
▼母機の航空機の胴体下から水平発射されるペガサス・ロケット

▼ペガサス・ロケット

ガンマ線バーストとは、宇宙の一点から突然多量のガンマ線が爆発的に放射される現象であり、宇宙で最も規模の大きい爆発現象のひとつである。太古の宇宙に起源をもつらしいことはわかっているが、その正体は謎に包まれている。短期間で収束してしまう現象であるため、バーストの発生後できるだけ早期に正確な位置をつかみ、すばやくさまざまな観測機器で観測を行なうことが解明のカギとなる。「HETE-2」の役割は、ガンマ線バーストの発生を監視し、すばやく高精度な位置速報を行なうことである。「HETE-2」の登場により、ガンマ線バーストの発生からの速報性および位置測定精度は飛躍的に向上する。
「HETE-2」の製作においては日本の理化学研究所が、ガンマ線バーストの位置決めにおいて中心的な役割を担う観測装置「広視野X線モニター」の開発・製作を担当している。
◆◆HETE -2 観測成果
【2001年11月7日】
HETE 衛星が、貴重なガンマ線バーストの残光を見つける
宇宙でもっとも強力なタイプの爆発、ガンマ線バーストの可視光での残光が、NASA の衛星 HETE(High Energy Transient Explorer)によって得られた情報をもとに発見された。この衛星は transient(一時的な,つかの間の)という名が示すとおり、頻繁に発生するが数秒しか続かない高エネルギー爆発現象を研究するための初めての衛星である。

▲ガンマ線バーストを観測する HETE のイラスト(画像提供:NASA)
今回 HETE によって捉えられたガンマ線バーストは 9 月 21 日にとかげ座で起こったもので、地球からの距離はおよそ 50 億光年ほどと比較的近い。ガンマ線バーストは 100 億光年以上離れたものもあるのだ。HETE の主任である George Ricker 博士は次のように語っている。「今回のガンマ線バースト現象とその残光を観測できたことで、我々は本当に研究の山場を越えた。HETE がもっと多くの現象の位置を測定してくれれば、何がガンマ線バーストを起こしているのか理解し始められそうだ」
可視光の波長で残光をみることができれば、何がこの謎に包まれたバースト現象を引き起こしているのかについての決定的な情報を与えてくれる。今のところは科学者たちは、バーストを引き起こしているのは大質量の星の爆発か、あるいは中性子星とブラックホールの合体か、ひょっとするとその両方であると予測している。
HETE は、バースト現象をガンマ線や高エネルギー X 線で検出すると、すぐにその位置を地上の望遠鏡や軌道を周回している他の衛星に中継する。これによって、多くの望遠鏡を使ってさまざまな波長でガンマ線バーストの残光を観測することができる。今回の可視光での残光は、HETE の情報をもとに翌 22 日にパロマー山の 200 インチ望遠鏡で撮影されたものである。
HETE は 2000 年 10 月に打ち上げられ、2004 年まで観測を続ける予定だ。
【2001年11月15日】
ガンマ線バーストをとらえたHETE
NASAの人工衛星HETEが強力なガンマ線バーストをとらえ、その位置を特定しました。これに基づいてその余光に対しておこなわれた追跡観測により、このバーストは、50億光年という、ガンマ線バーストとしては比較的近い距離で起こったことが確かめられました。一般的に、ガンマ線バーストは10億光年以上の距離で起こるものが多いと考えられています。

▲ガンマ線バーストの余光のイラスト(画像提供:NASA)
このガンマ線バーストGRB010921は9月21日に「とかげ座」で起こりました。HETE (High Energy Transient Explorer) はこの現象をとらえ、その精密な位置を通報してきました。この情報に基づいて、カリフォルニア工科大学のクルカーニ(Kulkarni,S.)たちのチームは9月22日にパロマー山の200インチ望遠鏡をその位置に向けて分光観測をおこない、その余光の赤方偏移を測定しました。この追跡観測は10月17日にも繰り返して行われ、その結果、50億光年という距離が求められたのです。それだけでなく、ニューメキシコ州の超大型干渉電波望遠鏡群(Very Large Array;VLA)アンテナも、10月17日にこのガンマ線バーストに起因すると思われる電波を捕らえました。これらはHETEによって得られた最初の具体的成果でした。
ガンマ線バーストは非常に遠い宇宙で起こる強力な爆発現象で、宇宙のどこかで1日に1回くらいの割合で起こっています。しかし、その爆発のメカニズムはほとんどわかっていません。数秒から数10秒の短時間に強いガンマ線を放射することで検出されますが、その時間があまりにも短いこと、またガンマ線は大気で吸収されて地上に届かないことから、詳しい観測は困難でした。バーストに伴ってX線や光、電波などがその余光として放射されますから、それらを観測して情報が得られるはずです。しかし、ガンマ線放射の精密精密位置を決めるのが困難であったため、ガンマ線バーストの正体を突き止める作業はなかなか進みませんでした。
1997年になってイタリア、オランダが共同で打ち上げた人工衛星ベッポ・サックス(BeppoSAX)を利用して、やっと位置の特定が可能になり、現在少しずつその実体が明らかになりつつあります。HETEはそのガンマ線や余光のX線を使ってこれらガンマ線バーストの位置を精密に決めることを最大の目的として、マサチューセッツ工科大学(MIT)が建造した衛星です。
【2003年6月】
ガンマ線バーストは極超新星が起源?
国立天文台、東京大学、テキサス大学(米国)などからなる観測グループが、 ガンマ線バーストGRB 030329(超新星SN2003dh)の分光観測に成功し、この天体が極超新星であることを明瞭に示した。
この天体は、2003年3月29日にガンマ線バースト探査衛星HETE-2によって最初に捉えられ、GRB 030329と名づけられた。ガンマ線バーストとは、天球の一点が突然ガンマ線波長で明るく輝いて見える天体現象である。このガンマ線バーストGRB 030329に対応する天体が 可視光でも見つかり、追跡観測によってIc型超新星と似たスペクトル示すことが判明した。このため、同じ天体に対してSN2003dhという超新星としての名前もつけられた。ガンマ線バーストという現象は、最初の発見から30年あまり経った現在でも起源がよくわかっておらず、可視光でも捉えられたこの天体に注目が集まっている。

▲GRB 030329のスペクトル(黒)と、別の2つの極超新星のスペクトル(赤、緑)。よく似た特徴をしていることがわかる(提供:国立天文台、すばる望遠鏡)
観測は、すばる望遠鏡の微光天体分光撮像装置FOCASを用いて、ハワイ時間2003年5月7日及び8日に行われた。グラフからわかるように、すばるで得られたこの天体(SN2003dh/GRB 030329)のスペクトルは、過去に見つかった他の超新星のスペクトルとよく似た特徴をもっている。比較として挙げられているSN1997efやSN1998bwは、爆発のエネルギーが通常の超新星よりも一桁ほど大きく、極超新星とも呼ばれている。
過去にもガンマ線バーストと超新星の繋がりを示唆する観測例は存在するが、 スペクトルの一致がこれだけ明瞭にとらえられたのは、今回の天体が初めてである。ガンマ線バーストの起源に迫る重要な観測結果といえるだろう。また、4月上旬に撮られたスペクトルと約1か月後の今回撮られたスペクトルは変化していた。超新星爆発の外部と内部で の構造の違いを反映しているとも考えられるが、詳しい解釈は今後の解析を待つ必要がありそうだ。
【2004年10月】
HETE-2が捉えた、超新星爆発の兆候と思われる高エネルギー現象
超新星爆発の兆候と思われる爆発現象が異なる3つの領域から捉えられた。この観測から、超新星爆発を起こす天体を事前察知でき、超新星の進化過程が明らかにされることが期待されている。


▲(上)超新星の想像図、(下)星の崩壊の引き金と考えられているガンマ線バーストの想像図(提供:NASA)
今年9月12日と16日に捉えられたのは、2つのX線フラッシュだ。これら2つのX線フラッシュに続き、同月26日にはX線フラッシュとガンマ線バーストのちょうど境界と言える放射線が捉えられた。これらが超新星爆発を予告するシグナルだとすると、今後専門家は超新星爆発を事前に予測することが可能となる。その場所を見守ることで、超新星爆発の一部始終を観測できることになるのだ。
今回の現象の検出によって、従来ガンマ線バーストを伴う超新星爆発はX線フラッシュとは関係がないしていた説が否定されることになりそうだ。今回のX線フラッシュの観測は、超新星爆発へとつながる初の現象の観測となるかもしれない。
現象の検出に活躍したガンマ線バースト観測衛星HETE-2(High Energy Transient Explorer)は、現象を検出し、自らも観測を行う。と同時に、他の天文台に現象の位置を知らせ、引き続き余光の観測を可能にさせる役割を担っている。
◆ガンマ線観測関連ニュース
【2005年7月】
新種の高エネルギーガンマ線源を発見
H.E.S.S.(High Energy Stereoscopic System)プロジェクトに携わる天体物理学者の国際的チームが、新種の超高エネルギー(Very High Energy, VHE)ガンマ線源を発見した。中心にあるのは、クエーサーに似ているものの、実際にはより小規模なもので、銀河系内にある「マイクロクエーサー」と呼ばれる天体であると考えられている。

▲コンピュータシミュレーションによるマイクロクエーサー LS5039の画像。クリックで拡大(提供:PPARC Newsリリースページより)
H.E.S.S.のチームによって発見されたのは、LS5039とよばれる天体で、VHEガンマ線を放射している。LS5039は、マイクロクエーサーと考えられている。マイクロクエーサーの正体は、普通の恒星と中性子星(またはブラックホール)のようなコンパクトで重い天体からなる連星系だ。コンパクト天体の強力な重力によって、伴星から物質がコンパクト天体に引き寄せられ、旋回して落ち込んでいくのだ。コンパクト天体が取り込むことのできる以上の物質が流れ込むと、余分な物質が光速に近い速度の高速ジェットとなり放出される。これがマイクロクエーサーとして観測される。似たような天体としてクエーサーがあるが、こちらはコンパクト天体が太陽質量の1億倍にもなり、はるかに大きなエネルギーを放出している。しかし、マイクロクエーサーは、はるかに小規模ながら、われわれの天の川銀河の中に存在する天体なので、VHEガンマ線源として観測されるのだ。
LS5039のようなマイクロクエーサーは、まだ数例しか発見されていない。なかでもLS5039は、謎だらけの天体だ。コンパクト天体が中性子星のように振る舞っているかと思えば、ブラックホールのような性質も示している。さらに、吹き出している高速ジェットも実はあまり「高速」ではない。その速度は光速の20%だが、実はこれは同種の天体に比べるとかなり遅いのだ。おまけに、ガンマ線が放出されるメカニズムも不明だ。チームのあるメンバーは「こんな天体を見つけなければよかった」とまで語っている。彼によれば、このような天体から放出されたガンマ線は、この連星系から逃げ出すより、むしろ吸収されるはずだという。
もちろん、研究チームの多くはこの発見を喜んでいる。別のメンバーは、ガンマ線源のカタログに新種の天体を加えることができたことに興奮している。今後も、謎を解明するためにLS5039の観測を続けるそうだ。
ガンマ線は、宇宙における様々な劇的な現象により作られる。超新星爆発などがその一例だ。ガンマ線そのものは、同じ量の可視光よりもはるかに強いエネルギーを持っているが、地球に到達する量は非常に少なく、おまけに大気で吸収されてしまうので観測が難しい。H.E.S.S.はこれを逆手にとり、ガンマ線が大気に吸収されるときに発生する青い光=チェレンコフ光を観測することでガンマ線源を見つけるのだ。観測に使われる望遠鏡はアフリカの西南部、ナミビアにあり、ナミビアを含めた世界各国100人以上の科学者・技術者がこのプロジェクトに携わっている。
【2006年9月】
中間的な超新星?弱いガンマ線バースト、強めの爆発
超新星の中でも、けた違いに爆発エネルギーが大きいのが「極超新星」だ。極超新星はブラックホールの生成やガンマ線バーストを伴うなど、普通の超新星とは異質とも言えるほどの違いがある。だが、今年の2月に見つかった「X線フラッシュ」を伴う超新星が、超新星と極超新星の間にある大きな谷を埋めるかもしれない。

▲SN 2006aj。左はDSS2による、爆発前の写真。○で囲まれたのが、SN 2006ajの舞台となった銀河。右は、VLTによるSN 2006aj増光中の写真。クリックで拡大(提供:DSS2, ESO)
超新星といえば、巨大な星の最期に起こる激烈な爆発である。過去に、われわれの天の川銀河で起きた超新星爆発が観測されたときは、昼間でも見えるほどの強い輝きを見せたという。しかし、それほどの爆発であっても、あらゆる超新星と比べればまだまだ弱い。
普通の超新星と比べて、極超新星は別格だ。極超新星の輝きそのものも強いが、爆発の最初の数秒間で解放されるエネルギーは、太陽が100億年の生涯で放射するエネルギーを上回るほどのものだと考えられている。もちろん、どの極超新星も数億光年以上離れているので、望遠鏡でなければ観測できないほど暗い。だが、最初に放出されたエネルギーはガンマ線バーストとして科学衛星などで観測され、爆発の強さを物語ってくれる。
典型的な超新星は、
(1)太陽質量の10倍程度の恒星が(2)GRBを伴わずに爆発し(3)中性子星が残る、というものである。
一方、極超新星は
(1)太陽質量の40倍程度の恒星が(2)GRBを伴って爆発し(地球から見た向きによってはGRBが観測されないこともある)(3)ブラックホールが残るものだ、と推測されている。
両者の差は歴然としていて、異質とさえ言えた。
そんな中で、欧米や日本などの国際的な研究者チームが、中間的な超新星爆発を観測したと発表した。科学雑誌「ネイチャー」の8月31日号に、この超新星に関する論文が4つも掲載されたことから、注目度の高さがうかがえる。
まず最初に、NASAの観測衛星スウィフトがひじょうに弱いGRBを検出した。ガンマ線の量はごくわずかで、どちらかというと「X線フラッシュ(XRF)」とでもいうべき現象だった。今年(2006年)の2月18日に観測されたことから、GRB 060218もしくはXRF 060218と呼ばれる。爆発の位置はおひつじ座の方向4億4000万光年の距離で、GRBとしては歴代2位の近さ。さらに、大抵のGRBが数十秒程度で消えるのに対して、2000秒近く観測された。
GRBの直後に、超新星とみられる輝きが検出された。かくして、世界中の天文学者が、今までにないタイプの超新星・SN 2006ajの一部始終を見届けることができたのである。その明るさは、極超新星の半分ほどだが、普通の超新星の2, 3倍だった。
放出されたエネルギーや爆発の際に放出された元素の測定などによれば、SN 2006ajとなる前の恒星は太陽質量の20倍程度だったようだ。もう少し重ければブラックホールを残したと思われるが、どうやら残骸は中性子星らしい。しかし、ただの中性子星ではなく、「マグネター」かもしれないとの指摘がある。多くの中性子星は強い磁場を持ちながら高速で自転しているため、規則正しい信号を送っているように見える「パルサー」として観測されるが、「マグネター」はさらに強力な磁場を持つ天体だ。XRFが放出されたこと、そしてXRFが異常に長い間続いた原因は磁場にある、とも考えられている。
まとめれば、SN 2006ajは(1)太陽質量の20倍程度の恒星が(2)ひじょうに弱いGRBを伴って爆発し(3)マグネターが残る超新星だった、ということになる。まさに、中間的な存在だ。
恒星の進化を考えると、SN 2006ajのような超新星は極超新星の100倍ほどの頻度で起きているはずである。しかし、観測技術の限界から、超新星もXRFも今回のように比較的近くなければ検出できないようだ。ちなみに、極超新星自体の発見数は少ないものの、GRBはスウィフトなどによって(正体が極超新星以外と見られるものも含めて)1日あたり1個近いペースで観測されている。












