地質時代・・先カンブリア時代 原生代
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原生代(げんせいだい、Proterozoic)とは、地質時代の区分(累代)のひとつ。
真核単細胞生物から硬い骨格を持った多細胞生物の化石が多数現れるまでの25億年前〜約5億4,200万年前を指す。
元々は、先カンブリア時代以前の全ての時代を指していた。冥王代、太古代、原生代をまとめて先カンブリア時代と呼ぶこともある。太古代の次の時代で、古生代(カンブリア紀)の前の時代である。
シアノバクテリアの活動によって大気中に酸素の放出が始まり、オゾン層ができて紫外線が地表に届かなくなった。また、古細菌類から原始真核生物が分岐し、さらにαプロテオバクテリア(後のミトコンドリア)が共生することで現在の真核生物が成立した。後期には多細胞生物も出現した。
概要
原生代の始まりは切りの良い数字である25億年前が広く用いられている。これは顕生代のような年代を決める明瞭な地質学的事項がないため、1981年に提唱された「25億年」が使われている。25億年前の前後数億年間は、地球の内部や表面で大きな変化があり、「大変流動的な太古代」から現代的な原生代へ移行した。原生代の終わり すなわち顕生代の始まりは、カンブリア紀の示準化石であるフィコデス属ペダム種(Phycodes属Pedum種)の生痕化石が見つかる約5億4200万年前とされている。
地球表層の状況
太古代はマントルの温度が現在よりもかなり高く、その影響でマントルが部分溶融してできたマグマに由来する火成岩の成分が現在とは大きく異なっていたが、25億年前前後に現在の組成に近いものに移行した。ほぼ同時期に海中に巨大な縞状鉄鉱床が堆積し、大気中の大量な二酸化炭素が減り酸素濃度が上がった。原生代を通じて陸地が増え、いくつかの大陸や超大陸が生まれた。気候が寒冷化し、氷河期の痕跡が残るようになったが、最も寒冷化した際には地球全体が氷結したスノーボールアースも複数回起こった。
原生代初期の地表
27億年前に非常に活発な火山活動があり、陸地が大幅に増えた。増えた大陸の周辺の浅い海に、光合成をおこなうシアノバクテリアの集合体であるストロマトライトが大規模に形成された。ストロマトライトから放出された酸素は海中に拡散し、当時の海中に大量に溶解していた2価の鉄イオンを酸化して沈殿させ縞状鉄鉱床を生成した。縞状鉄鉱床の生成のピークは27億年前から19億年前までであった。
太古代の大気には酸素はほとんどなく、大量の二酸化炭素と窒素が大気の成分であった。原生代に入ってストロマトライトの活動で酸素が生成され始めたが、浅海に2価の鉄が十分ある間は酸素が直ちに消費されるため、大気中の酸素濃度は非常に低いレベルのままであった。しかし22億年前頃から大気に酸素が含まれていたことを示す「赤色土壌」や「赤色砂岩」が出現するようになった。その後大気中の酸素の比率は徐々に増えてゆく。22-23億年前に地球は寒冷化し何回かの氷河時代を迎えたが、最も寒冷化したヒューロニアン氷期には赤道近くまで氷結し、スノーボールアースとなった可能性があるとされる。寒冷化の原因は大気中の二酸化炭素濃度が下がって温室効果が減ったためと推定される。二酸化炭素濃度減少の原因は、大陸の拡大によって岩石の風化量が増え風化岩石中の金属元素が空中の二酸化炭素を消費したと考えられるが、さらに風化した塩類が海に入って大量の栄養塩類となり生物活動(光合成)を活発化させ、二酸化炭素を消費したことも考えられる。
超大陸の形成
プレートテクトニクスでは、プレートが動くことでその上の陸地も地表を移動する。地球の歴史では殆どの大陸が1か所に集結して巨大な超大陸を形成したことがあった。顕生代に存在したパンゲアは有名であるが、原生代後期の10億年前頃にも「地上のほとんどの陸地が集まった超大陸」が存在したとする検討結果が1990年頃から報告されている。この超大陸はロディニア大陸と呼ばれるが、約7億年前に3つに分裂した。ロディニアはそれ以前にあった比較的大きなヌーナ大陸・コロンビア大陸・アトランティカ大陸の3つが合体したものである。これら3大陸は約19億年前にあった活発な大陸成長のピーク期に、もっと小さな陸地が集合し成長して生成した。
原生代後期の氷河時代
原生代後期に相当する地層から「氷河に起因する堆積物」が世界各地で発見されており、この時代に何度か寒冷な時期があった事が判明している。特にスターチアン氷河時代(7億3千万年-7億年前)とマリノニアン氷河時代(6億6500万-6億3500万年前)には当時の赤道近くの地層からも氷河に起因する堆積物が見つかっており、地球が非常に寒冷化したことが分かっている。当時の地層から採取された岩石の分析結果(炭素同位体比)から、当時の生物圏が壊滅的な打撃を受け、地球上の全ての生物活動がほとんど停止していたことが判明した。この現象を研究したカリフォルニア工科大学のカーシェビンクは、この時代に地球全体が凍結したスノーボールアース現象が起こったとしている。
原生代の生物
太古代の生物は、古細菌と真正細菌が主体であった。原生代に入るとより進化し複雑な組織を持つ真核生物が繁栄し、原生代の後期には多細胞生物が生まれた。原生代最後のエディアカラ紀の地層からは多数の動物の化石が見つかっている。
真核生物の誕生
酸素を生み出したシアノバクテリアは細胞内に核を持たない細菌であるが、21億年前の縞状鉄鉱床から細胞内に核を有する真核生物の化石が1992年に発見された。これはグリパニア(grypania)と呼ばれて、コイル状の管からできている。およそ17億年前ごろから球形をした化石が無数に見つかっている。精巧な細胞壁を持っているものがあり、原始的な藻類の胞子だと考えられている。これらはアクリタークと命名されている。大きさは時代が新しくなるにつれて大きくなるが直径が数分の一ミリメートル程度である。
多細胞生物の誕生
植物の多細胞生物の化石で最も古いものは、カナダのサマーセット島の7億5000年前〜12億5万年前のハンディング地層から見つかった紅藻類の化石である。また東シベリアの10-9億年前の地層から藻類の化石が見つかっている。動物では1947年に南オーストラリアのフリンダース山脈のエディアカラの丘にある原生代最末期の地層から、肉眼で見える動物の化石(スプリッギナ)が発見された。その後エディアカラの丘やその周辺から多種多数の動物の化石が発見され、エディアカラ動物群と呼ばれている。エディアカラ動物群の化石が見つかるのは5億7千万年前から5億4千万年前という短い期間に集中しており、すべて硬い骨格を持たない生物であった。エディアカラ動物群の化石は世界の20か所以上の地域で見つかっている。これらの化石が産出する時代はかつてベンド紀と呼ばれていたが、現在はエディアカラ紀と呼ばれている。これらの多細胞動物が誕生する直前に著しい寒冷期だったマリノニアン氷河時代があり、環境の激変が動物の急激な進化を促したという議論がある。
多細胞動物については 次の顕生代のカンブリア紀で硬い骨格を有する多種多様な動物群が一気に出現する。
区分
前期、中期、後期に分けることができる。
- 前期 古原生代(Paleo proterozoic)は、25億年前から16億年までを指す。
- 中期 中原生代(Meso proterozoic)は、16億年前から10億年前までを指す。
- 後期 新原生代(Neo proterozoic)は、10億年前から約5億4,200万年前までを指す。
尚、前期はシデリアン、リィアキアン、オロシリアン、スタテリアン、
中期はカリミアン、エクタシアン、ステニアン、
後期はトニアン、クライオジェニアン、エディアカラン(エディアカラ紀)にそれぞれ分かれる。
また、古生代カンブリア紀以前の地質時代を「先カンブリア時代」と呼ぶので、「先カンブリア時代地質区分」として研究する学者もいる。
◆
| 開始年代 (年前) | 累代 | 代 | 紀 | 世 | 概要 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1万1700年 | 顕生代 | 新生代 | 第四紀 | 完新世 | 人類の時代。更新世末に、大型哺乳類の大規模な絶滅。氷期と間氷期の繰り返し。大規模な氷河。日本海が拡がり、弓状の日本列島となる。 |
| 258万年 | 更新世 | ||||
| 533万3000年 | 新第三紀 | 鮮新世 | パナマ地峡形成、ヒマラヤ山脈上昇、寒冷化、氷床発達。ヒトの祖先誕生。 | ||
| 2303万年 | 中新世 | 生物相はより現代に近づく。アフリカがユーラシア大陸と繋がったことで両大陸間の拡散。インド大陸衝突。孤立している南アメリカとオーストラリアは、異なった動物相。日本海となる地溝帯が細長い海となり島(古日本列島)が誕生。 | |||
| 3390万年 | 古第三紀 | 漸新世 | 気候変動による大規模な海退。哺乳類の進化・大型化。日本列島に当たる部分は大陸の一部、後に日本海となる地溝帯が拡大。 | ||
| 5600万年 | 始新世 | 現存哺乳類のほとんどの目(もく)が出現。 | |||
| 6600万年 | 暁新世 | アフリカ、南アメリカ、南極大陸は分離。ヨーロッパと北アメリカはまだ陸続き。インドは巨大な島。絶滅した恐竜の後の哺乳類、魚類の放散進化。植物は、白亜紀に引き続き被子植物が栄え、この時代にほぼ現代的な様相 | |||
| 1億4500万年 | 中生代 | 白亜紀 | ジュラ紀から白亜紀の境目に大きな絶滅などはなく、白亜紀も長期にわたり温暖で湿潤な気候が続いた。恐竜の繁栄と絶滅。哺乳類の進化、真鳥類の出現。後期にかけて各大陸が完全に分かれ配置は異なるが現在の諸大陸の形になる。末期に小惑星の衝突が原因と推定されるK-T境界の大量絶滅。 | ||
| 2億130万年 | ジュラ紀 | パンゲア大陸がローラシア大陸、ゴンドワナ大陸へ分かれ始め、後期にはゴンドワナ大陸も分裂を開始。絶滅を生き残った恐竜が栄えた。被子植物の出現。有袋類、始祖鳥出現。ジュラ紀は現在より高温多湿で、動物・植物はともに種類が増え、大型化していった。 | |||
| 2億5217万年 | 三畳紀 | パンゲア超大陸、平原化、砂漠化。気温上昇、低酸素化。恐竜の出現。紀末に76%が大量絶滅。 | |||
| 2億9890万年 | 古生代 | ペルム紀 | ユーラメリカ大陸とゴンドワナ大陸が衝突し、さらにはシベリア大陸も衝突しパンゲア大陸へ。単弓類の出現。紀末に95%以上の生物種が絶滅。シベリア洪水玄武岩が原因か。P-T境界 | ||
| 3億5890万年 | 石炭紀 | ゴンドワナ大陸、ローレンシア大陸、バルチック大陸、ユーラメリカ大陸。シダ植物の繁栄、昆虫の繁栄、爬虫類の出現。 | |||
| 4億1920万年 | デボン紀 | 両生類の出現、シダ植物、種子植物の出現。紀末に海洋生物種の82%が絶滅した。 | |||
| 4億4340万年 | シルル紀 | 昆虫類や最古の陸上植物が出現 | |||
| 4億8540万年 | オルドビス紀 | オウムガイの全盛期で三葉虫のような節足動物や筆石のような半索動物が栄えた。甲冑魚のような魚類が登場。紀末に85%の種の大量絶滅。オゾン層形成。 | |||
| 5億4100万年 | カンブリア紀 | 海洋が地球上のほぼ全てを覆い尽くす、動物門のほとんどすべてが出現したと考えられている。「カンブリア爆発」と呼ばれる急激な生物多様化。 | |||
| 6億3500万年 | 原生代 | 新原生代 | エディアカラン | 多細胞生物の出現。エディアカラ生物群 紀末に大量絶滅。6億年前に雪球地球 | |
| 8億5000万年 | クライオジェニアン | 7億年前に雪球地球 | |||
| 10億年 | トニアン | ロディニア超大陸の分裂開始。 | |||
| 12億年 | 中原生代 | ステニアン | ロディニア超大陸の形成。大陸棚の拡大。シアノバクテリアの最盛期、酸素分圧(酸素濃度)が現在の10%以上まで上昇。真核生物の出現。代末に有性生殖発現。 | ||
| 14億年 | エクタシアン | ||||
| 16億年 | カリミアン | ||||
| 18億年 | 古原生代 | スタテリアン | 大陸がはじめて安定した(クラトン化)。最初の超大陸(ヌーナ大陸)出現か? 光合成により遊離酸素を放出する微生物シアノバクテリアの繁栄。大酸化イベントによる縞状鉄鉱層の形成。大部分の嫌気性微生物の消滅。ヒューロニアン氷期、22-23億年前に雪玉地球。全大陸にわたる造山活動。2回の最大級の小惑星衝突。 | ||
| 20億5千万年 | オロシリアン | ||||
| 23億年 | リィアキアン | ||||
| 25億年 | シデリアン | ||||
| 28億年 | 太古代(始生代) | 新太古代(新始生代) | 初期に全生物の共通祖先が現れ、細菌の祖先と古細菌類の祖先が誕生したと推定されている。藍藻(シアノバクテリア)の出現。始生代の微生物の化石(微化石)がいくつか見つかっている。 | ||
| 32億年 | 中太古代(中始生代) | ||||
| 36億年 | 古太古代(古始生代) | ||||
| 40億年 | 原太古代(原始生代) | ||||
| 46億年 | 冥王代 | 地球誕生、月の形成(ジャイアント・インパクト説)、隕石の後期重爆撃期。地殻と原始海洋ができ、有機化合物(生命前駆物質)の化学進化の結果、原始生命体が誕生したと考えられている。40億年前の岩石や44億年前の結晶が見つかっている。 | |||












