中生代(1) 三畳紀
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中生代(ちゅうせいだい、仏: Mésozoïque、英: Mesozoic era)は、古生代・中生代・新生代と分かれる地質時代の大きな区分の一つである。約2億5217万年前から約6600万年前に相当し、恐竜が生息していた時期にほぼ対応する。
三畳紀(さんじょうき、Triassic period)は、現在から約2億5100万年前に始まり、約1億9960万年前まで続く地質時代である。トリアス紀(トリアスき)と訳すこともある。三畳紀の名は、南ドイツで発見されたこの紀の地層において、赤色の砂岩、白色の石灰岩、茶色の砂岩と堆積条件の異なる3層が重畳していたことに由来する。
中生代の最初の紀であり、ペルム紀(二畳紀)の次、ジュラ紀の前にあたる。開始および終了の時期は、研究者やその学説によって、いずれも互いに1000万年前後の年代差がみられる。
三畳紀の編年と時期区分
「三畳紀」の名称は冒頭に掲げた通り、二畳紀(ペルム紀)の上層に、上位より、
- コイパー砂岩<Keuper(en)> —— 上畳統
- ムッシェルカルク<Muschelkalk(en)> —— 殻灰統
- ブンテル砂岩<Bunter(en)またはBuntsandstein(en)> —— 斑砂統
の3層が重畳していることにより、ドイツの地質学者フリードリヒ・フォン・アルベルティ(en)が1834年に命名したことに由来する[2][3]。
しかし、実際にはドイツ周辺の海成層は三畳紀中期に属する年代のものに限られるため、三畳紀全体を通しての編年にはアルプス山脈、ヒマラヤ山脈、および北アメリカ大陸北部における海生動物の化石に富む地層も併用され、これらを標準として国際的な時期区分が設定されている。以下、一般的な3期6階の国際的時期区分を示す。なお、括弧内にはドイツ周辺の地層との関係を示している。
- 前期
- スキティアン階(ブンテル)
- 中期
- アニシアン階(ブンテル/ムッシェルカルク)
- ラディニアン階(ムッシェルカルク/コイパー)
- 後期
- カーニアン階(コイパー)
- ノリアン階(コイパー)
- レーティアン階(コイパー/レエティク)
ヨーロッパにおいて、ブンテルは浅い凹地に堆積した色鮮やかな堆積物を含有する系列、ムッシェルカルクは貝類化石をともなう石灰岩系列で、コイパーは、厳しい乾燥を示す岩塩と石膏の層をともなう大陸の堆積物の系列として知られてきたが、こんにちでは第4の系列としてレエティクが含まれ、三畳紀最新の地層に位置づけられている。
三畳紀の概要
ペルム紀末の大量絶滅
古生代最後のペルム紀と中生代最初の三畳紀の境目(P-T境界)には世界的な海退があり、地球史上最大の大量絶滅があったとされる(ペルム紀末の大量絶滅)。地球内部からのスーパープルームによる火山活動(シベリア台地玄武岩の形成)などにより、地球上の生物種の90パーセントないし95パーセントが絶滅したともいわれている。また、古生代末には現在の南半球に相当するゴンドワナ地域に広い範囲に氷河が広がっていたことが、氷成礫層(ティライト)や氷河擦痕、氷稿粘土などの多くの痕跡によって確認されている。
三葉虫や方解石サンゴ、紡錘虫類などは絶滅し、それまで繁栄していた単弓類などが種や属のレベルではほとんどが絶滅して、大きく衰退した[6]。軟体動物では、さまざまな二枚貝が死滅し、ゴニアタイトが絶滅するなどアンモナイト類を含む巻貝も大きな打撃を受け、腕足類もまたスピリファをのぞくすべてが滅んだ[4][6]。棘皮動物においても同様の傾向がみられ、海生生物の多様性は著しく損なわれた[2][6]。
三畳紀の自然環境
古生代末、ほとんど全ての大陸が合体し、三畳紀には北極から南極に至るパンゲア大陸と呼ばれる超大陸が形成された。また、山地をくずして内陸部に広大な平野をつくる陸地の平原化現象がおおいに進行した。内陸部の平野には乾燥気候の影響で砂漠化の進行がいちじるしく、赤色の砂が堆積していった。砂漠のところどころにはオアシスが点在した。
パンゲア大陸の周囲には、パンサラッサと称されるひとつながりの巨大な海洋と、大陸の東側にはテチス海と呼ばれる湾状の海が広がり、一部は珊瑚礁となっていた。
古生代終期に寒冷化した気候も、三畳紀を通じて気温は徐々に上昇していったものと推定される。ペルム紀に30パーセントほどあった酸素濃度も10パーセント程度まで低下し、ジュラ紀頃までの約1億年間、低酸素状態が続いた。
三畳紀は、広大な大テチス地向斜の発展がみられた時期と考えられている[4]。この地向斜から、2億もの年月を経たのち、アルプス・ヒマラヤ造山帯など新期造山帯と称される若い山脈が形成されていくものとみられている[4]。
三畳紀の生物
ペルム紀末の大量絶滅の後、空席になったニッチ(生態的地位)を埋めるように、海生生物では、古生代型の海生動物にかわって、新しい分類群がつぎつぎに出現した。六放サンゴやさまざまな翼形(よくけい)二枚貝などが発展するようになり[2]、アンモナイトは、中生代まで生き残った数種をもとにセラタイト型が爆発的に増えた[6]。また、類縁するベレムナイトが著しく多数にわたって現れた[4]。棘皮動物のうちウニ類は古生代においてはまだ十分な発達をとげなかったが、中生代には急激に進化しはじめ、多くの種を生じた[3][注釈 3]。このような新しい種の出現によって、三畳紀後期にはいったん損なわれた生物多様性を再び回復した[2]。
三畳紀の海成層の示準化石として重要なものとしては、セラタイト型アンモナイト、翼形二枚貝(ダオネラ、ハロビア、モノティス等)のほか、原生動物の放散虫、貝蝦(エステリア)、ウミユリ(棘皮動物)の一種エンクリヌス・リリイフォルミス[注釈 4]があり、歯状の微化石コノドントは生物学上の位置づけが未解決の部分もあるが、層位学的にはきわめて重要である[2][3]。なお、ダオネラは、現在のホタテガイに近縁する絶滅種であり、ダオネラ頁岩は堆積学的見地からも重視される。
これに対し陸上の動植物はペルム紀中に大変革を終えており、P-T境界においては海生生物におけるほどの劇的な変化をともなっていない[2][3]。ペルム紀においてすでに主竜類などをはじめとする爬虫類が水中のみならず陸上生活に適したものが増加し、三畳紀には体躯の大きなものも出現して繁栄した[3]。主竜類の中から三畳紀中期にはエオラプトルやヘレラサウルスなどの恐竜や翼竜、ワニが出現、また主竜類に近い系統からカメ類が現れた[8]。爬虫類はまた、肺呼吸を完全にし、種類によっては皮膚をウロコや硬い甲羅でおおうことによって乾燥した陸地への生活に適応していった[7]。
この時代の恐竜(初期恐竜)は、陸生脊椎動物のなかにあって特に大型であったわけではなく、初期恐竜と併存していた恐竜以外の爬虫類のなかに、それよりもはるかに大きく、個体数の多い種もあったと推定される[8]。中でもこの時代にワニ類を輩出したクルロタルシ類は繁栄の絶頂にあり、陸上生態系において支配的地位を占めていた。三畳紀の恐竜化石は特に南アメリカ大陸で多数検出されており、北米・アフリカ・ヨーロッパなどでも確認されている[8]。湿地帯などにのこされた爬虫類の足跡化石が多く発見されるようになるのも三畳紀に入ってからであり、これにより、肉食種が植物食種を捕食するシステムが成立していたことが推測される[3]。カメは、現存種には歯のある種はないものの、オドントケリスやプロガノケリスなど初期のカメには顎に歯があったことが確認されている[4]。また、四肢は現在のゾウガメに類似しており、陸上生活者であると考えられている[8]。三畳紀のワニ類もまた陸上生活者であり、全長は1メートルにおよばなかった[8]。
最初の哺乳類が現れたのも三畳紀であった[4]。哺乳類は、中生代を通じて小型であり、大きくてもネコか小型犬ほどの大きさであり多くの種はドブネズミかハツカネズミの大きさほどしかなかった[8]。
三畳紀には、従前は陸上でしかみられなかった爬虫類であったが、三畳紀に入ってその一部が海に進出した[8]。イクチオサウルスなどの魚竜や、泳ぐのに特化したひれ状の足をもつプラコドンなどの鰭竜類(Sauropterygia)、タラットサウルス類、板歯目などがそれである[4][8]。
魚類のうち、サメのなかまはペルム紀末の大量絶滅によって打撃を受け、その繁殖は限定的であったが、硬骨魚類は海中において顕著に繁殖した[9]。両生類は、中期に体長5メートルを越すと推定されるマストドンサウルスがあり、これは史上最大級の両生類の一つと考えられている。両生類には、分椎目のアファネランマに代表されるトレマトサウルス類のように海水に適応した種さえあったが、三畳紀を通じてその多くは衰退していった[10]。
陸上の植物ではシダ植物や裸子植物が著しく分布域を広げ[2]、ボルチアやアメリカ合衆国アリゾナ州におけるアラウカリオキシロンの珪化森林にみられるようにマツやスギの遠祖となる針葉樹が現れた[7]。種子植物でありながら独立した精子をつくるイチョウ類やソテツ類、ベネティティス類も多かった。湿地帯には、現在のシダ植物のヒカゲノカズラ科の類縁種である古代リンボクが豊富にのこり、シダやトクサも密に分布した[4]。また、古生代後期からひきつづき、ゴンドワナ植物群とアンガラ植物群とが植生を競いあっていた[2]。
三畳紀の終わり
三畳紀の終わりに、再びやや小規模な大量絶滅があった。海洋ではアンモナイトの多くの種が姿を消し、魚竜などの海洋棲爬虫類も打撃を受けた。陸上ではキノドン類、ディキノドン類の大半の種といった大量の単弓類(哺乳類型爬虫類)が絶滅した。三畳紀の終末を生き延びた恐竜など陸生脊椎動物は、繁殖様式(卵など)や生活様式から乾燥にとくに強いタイプのものと考えられる。また、爬虫類も単弓類同様に大型動物を中心に多くの種が絶滅した。まだ比較的小型だった恐竜は、三畳紀末期には竜脚類のような大型種も出現し、そののち急速に発展していく。絶滅の原因としては、直径3.3 - 7.8km程度の隕石の落下あるいは、中央大西洋マグマ分布域(Central Atlantic Magmatic Province)における火山活動との関連が指摘されている。
三畳紀の地層
三畳紀の地層を三畳系という。
三畳紀には大規模な海進はなかったとみられており、そのため、安定陸塊においては陸成層や台地玄武岩が卓越し、海成層の分布はほとんどみられない。一方、テチス海域だった地域および大洋周囲の変動帯ないし準安定地域だった地域には、しばしば珊瑚礁由来の石灰岩や層状チャートをふくんだ三畳系海成層もみられる。
三畳紀の日本
日本の三畳系は、ふるくは分布範囲はきわめて狭小であるとみなされてきたが、一時期古生代に属すと考えられてきた外帯(太平洋側)のチャート層や石炭岩からコノドント化石が見つかり、これによって三畳紀の地史が大きく解明された。すなわち、従来古生代後期の地層とされてきた海洋性の石灰岩やチャート、また、海底火山岩のうちのかなりの部分が三畳紀に形成された地層であるとみなされるようになった。一方、内帯(日本海側)および外帯一部には、三畳紀にすでに付加された古生代の地層と三畳紀前後に形成された花崗岩および広域変成岩が分布して、これらを基盤として三畳紀後期における陸棚性・瀕海性の厚い堆積物が比較的小範囲に点在する。その多くは炭層をふくみ、産出化石はシベリア方面の種との共通性を示している。
皿貝動物群
北上山地南部の太平洋沿岸にある宮城県南三陸町皿海集落には三畳系後期ノリアン階の貝化石産地があり、集落名を採って「皿貝動物群」あるいは「皿貝化石群」と称される。ここでは、モノティスと称される翼形二枚貝の検出が特徴的である。
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| 開始年代 (年前) | 累代 | 代 | 紀 | 世 | 概要 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1万1700年 | 顕生代 | 新生代 | 第四紀 | 完新世 | 人類の時代。更新世末に、大型哺乳類の大規模な絶滅。氷期と間氷期の繰り返し。大規模な氷河。日本海が拡がり、弓状の日本列島となる。 |
| 258万年 | 更新世 | ||||
| 533万3000年 | 新第三紀 | 鮮新世 | パナマ地峡形成、ヒマラヤ山脈上昇、寒冷化、氷床発達。ヒトの祖先誕生。 | ||
| 2303万年 | 中新世 | 生物相はより現代に近づく。アフリカがユーラシア大陸と繋がったことで両大陸間の拡散。インド大陸衝突。孤立している南アメリカとオーストラリアは、異なった動物相。日本海となる地溝帯が細長い海となり島(古日本列島)が誕生。 | |||
| 3390万年 | 古第三紀 | 漸新世 | 気候変動による大規模な海退。哺乳類の進化・大型化。日本列島に当たる部分は大陸の一部、後に日本海となる地溝帯が拡大。 | ||
| 5600万年 | 始新世 | 現存哺乳類のほとんどの目(もく)が出現。 | |||
| 6600万年 | 暁新世 | アフリカ、南アメリカ、南極大陸は分離。ヨーロッパと北アメリカはまだ陸続き。インドは巨大な島。絶滅した恐竜の後の哺乳類、魚類の放散進化。植物は、白亜紀に引き続き被子植物が栄え、この時代にほぼ現代的な様相 | |||
| 1億4500万年 | 中生代 | 白亜紀 | ジュラ紀から白亜紀の境目に大きな絶滅などはなく、白亜紀も長期にわたり温暖で湿潤な気候が続いた。恐竜の繁栄と絶滅。哺乳類の進化、真鳥類の出現。後期にかけて各大陸が完全に分かれ配置は異なるが現在の諸大陸の形になる。末期に小惑星の衝突が原因と推定されるK-T境界の大量絶滅。 | ||
| 2億130万年 | ジュラ紀 | パンゲア大陸がローラシア大陸、ゴンドワナ大陸へ分かれ始め、後期にはゴンドワナ大陸も分裂を開始。絶滅を生き残った恐竜が栄えた。被子植物の出現。有袋類、始祖鳥出現。ジュラ紀は現在より高温多湿で、動物・植物はともに種類が増え、大型化していった。 | |||
| 2億5217万年 | 三畳紀 | パンゲア超大陸、平原化、砂漠化。気温上昇、低酸素化。恐竜の出現。紀末に76%が大量絶滅。 | |||
| 2億9890万年 | 古生代 | ペルム紀 | ユーラメリカ大陸とゴンドワナ大陸が衝突し、さらにはシベリア大陸も衝突しパンゲア大陸へ。単弓類の出現。紀末に95%以上の生物種が絶滅。シベリア洪水玄武岩が原因か。P-T境界 | ||
| 3億5890万年 | 石炭紀 | ゴンドワナ大陸、ローレンシア大陸、バルチック大陸、ユーラメリカ大陸。シダ植物の繁栄、昆虫の繁栄、爬虫類の出現。 | |||
| 4億1920万年 | デボン紀 | 両生類の出現、シダ植物、種子植物の出現。紀末に海洋生物種の82%が絶滅した。 | |||
| 4億4340万年 | シルル紀 | 昆虫類や最古の陸上植物が出現 | |||
| 4億8540万年 | オルドビス紀 | オウムガイの全盛期で三葉虫のような節足動物や筆石のような半索動物が栄えた。甲冑魚のような魚類が登場。紀末に85%の種の大量絶滅。オゾン層形成。 | |||
| 5億4100万年 | カンブリア紀 | 海洋が地球上のほぼ全てを覆い尽くす、動物門のほとんどすべてが出現したと考えられている。「カンブリア爆発」と呼ばれる急激な生物多様化。 | |||
| 6億3500万年 | 原生代 | 新原生代 | エディアカラン | 多細胞生物の出現。エディアカラ生物群 紀末に大量絶滅。6億年前に雪球地球 | |
| 8億5000万年 | クライオジェニアン | 7億年前に雪球地球 | |||
| 10億年 | トニアン | ロディニア超大陸の分裂開始。 | |||
| 12億年 | 中原生代 | ステニアン | ロディニア超大陸の形成。大陸棚の拡大。シアノバクテリアの最盛期、酸素分圧(酸素濃度)が現在の10%以上まで上昇。真核生物の出現。代末に有性生殖発現。 | ||
| 14億年 | エクタシアン | ||||
| 16億年 | カリミアン | ||||
| 18億年 | 古原生代 | スタテリアン | 大陸がはじめて安定した(クラトン化)。最初の超大陸(ヌーナ大陸)出現か? 光合成により遊離酸素を放出する微生物シアノバクテリアの繁栄。大酸化イベントによる縞状鉄鉱層の形成。大部分の嫌気性微生物の消滅。ヒューロニアン氷期、22-23億年前に雪玉地球。全大陸にわたる造山活動。2回の最大級の小惑星衝突。 | ||
| 20億5千万年 | オロシリアン | ||||
| 23億年 | リィアキアン | ||||
| 25億年 | シデリアン | ||||
| 28億年 | 太古代(始生代) | 新太古代(新始生代) | 初期に全生物の共通祖先が現れ、細菌の祖先と古細菌類の祖先が誕生したと推定されている。藍藻(シアノバクテリア)の出現。始生代の微生物の化石(微化石)がいくつか見つかっている。 | ||
| 32億年 | 中太古代(中始生代) | ||||
| 36億年 | 古太古代(古始生代) | ||||
| 40億年 | 原太古代(原始生代) | ||||
| 46億年 | 冥王代 | 地球誕生、月の形成(ジャイアント・インパクト説)、隕石の後期重爆撃期。地殻と原始海洋ができ、有機化合物(生命前駆物質)の化学進化の結果、原始生命体が誕生したと考えられている。40億年前の岩石や44億年前の結晶が見つかっている。 | |||












