新生代(3) 第四紀
|
新生代(3) 第四紀
新生代(しんせいだい、英: Cenozoic era)は、古生代・中生代・新生代と分かれる地質時代、顕生代の大きな区分の一つである。約6,500万年前から現代までに相当し、恐竜、海中ではアンモナイトと海生爬虫類が絶滅した後、哺乳類と鳥類が繁栄したことで特徴づけられる。
新生代は、第四紀・新第三紀・古第三紀の3つの紀に区分される。また、新第三紀と古第三紀を合わせた地質時代を、非公式な用語として第三紀と呼ぶことが許されている。
第四紀
第四紀(Quaternary period)は地質時代の一つで、258万8000年前から現在までの期間。
他の地質時代が生物相の大幅な変化(特に大量絶滅)を境界として定められたのに対し、第四紀は人類の時代という意味で決められた。したがって、古人類学の進展に伴い次々に古い原人が発見されるとともに第四紀の始まる年代も変化していった。現在ではヒト属の出現を基準とし、地質層序や気候変動を併用して決定している。
第四紀より古い地層を、かつては三紀層と呼んでいたが、今では古第三紀・新第三紀に分かれている。
周辺の時代
| 周辺の時代 | ||
| 新生代 | 第四紀 Quaternary | 完新世 Holocene |
| 更新世 Pleistocene | ||
| 新第三紀 Neogene | 鮮新世 | |
語源
かつて、地質時代を大きく第一紀 (Primary)、第二紀 (Secondary)、第三紀、第四紀に分けたことに由来している。これらのうち第四紀のみが、現在も公式の名称となっている(第三紀は古第三紀と新第三紀に分割された)。
範囲
国際地質科学連合 (IUGS) は2009年に地質年代の区分方法を改めた[1]。日本地質学会や日本第四紀学会や日本学術会議地球惑星科学委員会などはこれに準じて2010年に定義を改定している[2]。
従前は「第三紀」と言って古第三紀と新第三紀の総称としてきたが、これを廃し、正式な用語としては「第三紀」「第三系」の術語を用いないことになった。また従前は新第三紀鮮新世に属していたジェラシアン(約258.8万年前〜約180.6万年前)が第四紀更新世に属することになった[2]。
これによりかつては181万年前以降を「第四紀」としていたが、約80万年さかのぼり、「第四紀」は258.8万年前から始まることになった[2][3]。
地球史46億年のうちでは短期間であるが、地球史の現代にあたり、近未来に続いてゆく時期である。
特徴
生物
気候
- 北半球高緯度の地域に、大陸並の規模の氷河が分布している。
- 氷期と間氷期を繰り返している(氷河時代の年表 § 第四紀の氷期/間氷期サイクルの命名体系も参照)。
- 4万年周期での気候変動が卓越している。
新第三紀との併合問題
2004年の国際地質科学連合 (IUGS) において、第四紀を新第三紀に併合し新生代をPaleogeneとNeogene(新第三紀+第四紀)の2つに区分する提案がなされたが、同年の万国地質学会 (IGC) では批准されず、国際第四紀学連合 (INQUA) もこの提案に反対した。これを受けてIUGS内の国際層序委員会 (ICS) とINQUAのタスクフォースが設置され、結論として、
- 第四紀の存続
- 第四紀の始まりを260万年前とする
ことが提案された。これは2008年のIUGS大会で投票され、2009年6月に新しい定義が批准された。 これにより、ジェラシアン階の基底の年代である2.588 Maが第四紀と新第三紀の境界と定められた。
◆更新世
更新世(こうしんせい、Pleistocene)は地質時代の区分の一つで、約258万年前から約1万年前までの期間。第四紀の第一の世。かつては洪積世(こうせきせい、Diluvium)[注 1]ともいい、そのほとんどは氷河時代であった。
この前の鮮新世(せんしんせい、Pliocene)と合わせて鮮新・更新世(Plio-Pleistocene)として扱われることもある。
分類
更新世は、前期、中期、後期に分けられ、前期はさらにジェラシアン及びカラブリアンに分けられている。
- 後期更新世(0.126 - 0.0117 Mya、12万6000年〜(西暦2000年から数えて)1万1700年前) - 現在、タランティアン (Tarantian) の名称がIUGS-ICSで検討されている。
- 中期更新世(0.781 - 0.126 Mya、78万1000年〜12万6000年前) - 名称について、2017年6月に日本の1チームがチバニアン (Chibanian)、イタリアの2チームがイオニアン (Ionian) を申請し、同年11月中旬にはチバニアンと命名されることがほぼ確実になったと報じられた。
- カラブリアン(1.806 - 0.781 Mya、180万6000年〜78万1000年前)[1]
- ジェラシアン(2.588 - 1.806 Mya、258万8000年〜180万6000年前)[1]
大陸
大陸の形は現在とほとんど変わらないが、氷期・間氷期の氷床の拡大・縮小による海水準変動に伴って、海岸線の位置が移動した。更新世の後期では海水準にして百数十メートルの変動があった。海水準が低下した時期は、現在浅い海である海域の多くが陸地となっている。
気候
氷期と間氷期を繰り返した。総計で15回の氷期があった。その主たる要因は地球の回転軌道の性質からもたらされる変化のために生じる太陽放射量の周期的な変動である(ミランコヴィッチ周期)。
更新世
- 200万年前 - ヒーバー氷期、ヒーバー-ドナウ間氷期
- 100万年前 - ドナウ氷期、ドナウ-ギュンツ間氷期
- 80万年前 - ギュンツ氷期(ネブラスカ)
- 50万年前 - ギュンツ-ミンデル間氷期(アフトニア)、ミンデル氷期(カンザス)
- 40万年前 - ミンデル-リス間氷期(イリノイ)、リス間氷期
- 25万年前 - 12万年前 リス氷期、
- 7万年前 - ヴュルム氷期(ウィスコンシン)(最終氷期)、リス-ヴュルム間氷期(サンガモン) - 北半球に巨大な氷床が発達しはじめた。カナダおよび米国北部、北西ヨーロッパの大部分を覆い、別の氷床がアルプス山脈とシベリアの一部を覆った。南半球ではそれほどでもなかったと考えられている。南極大陸は第四紀を通じて棚氷に覆われていた。
- 2〜1.8万年前 - 最寒冷期
- 1.4〜1.2万年前 - 古ドリアス期(小寒冷期)
完新世
- 1.2万年前 - アレレード期(温暖期)
- 1.1万年前 - 新ドリアス期
生物
- ヒト属が進化(原人ほか)。現生人類(ホモ・サピエンス種)も中期に出現。更新世の間にヒト亜族の大半が絶滅。最終的に現生人類のみが生き残った。
- 更新世の終わり頃から、大型の哺乳類の絶滅が始まる(特に北米大陸で顕著だったという)。これは完新世まで続く。
◆完新世
完新世(かんしんせい、Holocene)は地質時代区分(世)のうちで最も新しい時代である。第四紀の第二の世であると同時に、現代を含む。かつての沖積世(Alluvium)とはほぼ同義である。
最終氷期が終わる約1万年前から現在まで(近未来も含む)を指し、その境界は、大陸ヨーロッパにおける氷床の消滅をもって定義された。現在は、グリーンランド中央部から採取された氷床コアの研究に基づき、GSSPによってその下限が定義され、0.011784Ma (1万1,784年前)以降の時代を指すとされている。
出来事
- 気候環境が一転して地球全体が温暖化し、氷河がモレーン(堆石)を残して後退した。
- 地球各地が湿潤化して森林が増加、逆に草原が減少してマンモスやトナカイなどの大型哺乳類の生息環境が縮小し、彼らを絶滅させた。
- 期間が短いため大規模な大陸の移動などはないが、完新世の初期には、大陸氷床の融解によって海面が130m以上急激に上昇した。特に完新世の気候最温暖期と呼ばれる時代には、現在より3メートルから5メートルほど海水準(陸地に対する海面の相対的な高さ)が高かったとされる(縄文海進)。その後、海面は緩やかに下降し、海水準は直近の2,000年ほどは比較的安定している。
- ヤンガードリアス (Younger Dryas:YD) と呼ばれる「寒の戻り」期(約1万4000 - 1万1500年前)があった。8200年前にも寒冷期が認められる[3]。
- 約7300年前に南九州の鬼界アカホヤが噴火する。同時に巨大地震や巨大津波が発生した[4]。
- 更新世末から完新世初めにかけて、人類の直接の祖先であるヒト(ホモ・サピエンス・サピエンス)が世界規模で拡散する。人類の生活はそれまで、遊動しながらの狩猟(漁労)採集活動生活であったが、大きな川の流域などで定住農耕牧畜生活に大きく転換した。徐々に人類が文明を築き始めたことは人類史にとって重要な変化であった。
| 年代 | 累 | 代 | 紀 | 世 | 概要 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1万1700年 | 顕生代 | 新生代 | 第四紀 | 完新世 | 人類の時代。更新世末に、大型哺乳類の大規模な絶滅。氷期と間氷期の繰り返し。大規模な氷河。日本海が拡がり、弓状の日本列島となる。 |
| 258万年 | 更新世 | ||||
| 533万3000年 | 新第三紀 | 鮮新世 | パナマ地峡形成、ヒマラヤ山脈上昇、寒冷化、氷床発達。ヒトの祖先誕生。 | ||
| 2303万年 | 中新世 | 生物相はより現代に近づく。アフリカがユーラシア大陸と繋がったことで両大陸間の拡散。インド大陸衝突。孤立している南アメリカとオーストラリアは、異なった動物相。日本海となる地溝帯が細長い海となり島(古日本列島)が誕生。 | |||
| 3390万年 | 古第三紀 | 漸新世 | 気候変動による大規模な海退。哺乳類の進化・大型化。日本列島に当たる部分は大陸の一部、後に日本海となる地溝帯が拡大。 | ||
| 5600万年 | 始新世 | 現存哺乳類のほとんどの目(もく)が出現。 | |||
| 6600万年 | 暁新世 | アフリカ、南アメリカ、南極大陸は分離。ヨーロッパと北アメリカはまだ陸続き。インドは巨大な島。絶滅した恐竜の後の哺乳類、魚類の放散進化。植物は、白亜紀に引き続き被子植物が栄え、この時代にほぼ現代的な様相 | |||
| 1億4500万年 | 中生代 | 白亜紀 | ジュラ紀から白亜紀の境目に大きな絶滅などはなく、白亜紀も長期にわたり温暖で湿潤な気候が続いた。恐竜の繁栄と絶滅。哺乳類の進化、真鳥類の出現。後期にかけて各大陸が完全に分かれ配置は異なるが現在の諸大陸の形になる。末期に小惑星の衝突が原因と推定されるK-T境界の大量絶滅。 | ||
| 2億130万年 | ジュラ紀 | パンゲア大陸がローラシア大陸、ゴンドワナ大陸へ分かれ始め、後期にはゴンドワナ大陸も分裂を開始。絶滅を生き残った恐竜が栄えた。被子植物の出現。有袋類、始祖鳥出現。ジュラ紀は現在より高温多湿で、動物・植物はともに種類が増え、大型化していった。 | |||
| 2億5217万年 | 三畳紀 | パンゲア超大陸、平原化、砂漠化。気温上昇、低酸素化。恐竜の出現。紀末に76%が大量絶滅。 | |||
| 2億9890万年 | 古生代 | ペルム紀 | ユーラメリカ大陸とゴンドワナ大陸が衝突し、さらにはシベリア大陸も衝突しパンゲア大陸へ。単弓類の出現。紀末に95%以上の生物種が絶滅。シベリア洪水玄武岩が原因か。P-T境界 | ||
| 3億5890万年 | 石炭紀 | ゴンドワナ大陸、ローレンシア大陸、バルチック大陸、ユーラメリカ大陸。シダ植物の繁栄、昆虫の繁栄、爬虫類の出現。 | |||
| 4億1920万年 | デボン紀 | 両生類の出現、シダ植物、種子植物の出現。紀末に海洋生物種の82%が絶滅した。 | |||
| 4億4340万年 | シルル紀 | 昆虫類や最古の陸上植物が出現 | |||
| 4億8540万年 | オルドビス紀 | オウムガイの全盛期で三葉虫のような節足動物や筆石のような半索動物が栄えた。甲冑魚のような魚類が登場。紀末に85%の種の大量絶滅。オゾン層形成。 | |||
| 5億4100万年 | カンブリア紀 | 海洋が地球上のほぼ全てを覆い尽くす、動物門のほとんどすべてが出現したと考えられている。「カンブリア爆発」と呼ばれる急激な生物多様化。 | |||
| 6億3500万年 | 原生代 | 新原生代 | エディアカラン | 多細胞生物の出現。エディアカラ生物群 紀末に大量絶滅。6億年前に雪球地球 | |
| 8億5000万年 | クライオジェニアン | 7億年前に雪球地球 | |||
| 10億年 | トニアン | ロディニア超大陸の分裂開始。 | |||
| 12億年 | 中原生代 | ステニアン | ロディニア超大陸の形成。大陸棚の拡大。シアノバクテリアの最盛期、酸素分圧(酸素濃度)が現在の10%以上まで上昇。真核生物の出現。代末に有性生殖発現。 | ||
| 14億年 | エクタシアン | ||||
| 16億年 | カリミアン | ||||
| 18億年 | 古原生代 | スタテリアン | 大陸がはじめて安定した(クラトン化)。最初の超大陸(ヌーナ大陸)出現か? 光合成により遊離酸素を放出する微生物シアノバクテリアの繁栄。大酸化イベントによる縞状鉄鉱層の形成。大部分の嫌気性微生物の消滅。ヒューロニアン氷期、22-23億年前に雪玉地球。全大陸にわたる造山活動。2回の最大級の小惑星衝突。 | ||
| 20億5千万年 | オロシリアン | ||||
| 23億年 | リィアキアン | ||||
| 25億年 | シデリアン | ||||
| 28億年 | 太古代(始生代) | 新太古代(新始生代) | 初期に全生物の共通祖先が現れ、細菌の祖先と古細菌類の祖先が誕生したと推定されている。藍藻(シアノバクテリア)の出現。始生代の微生物の化石(微化石)がいくつか見つかっている。 | ||
| 32億年 | 中太古代(中始生代) | ||||
| 36億年 | 古太古代(古始生代) | ||||
| 40億年 | 原太古代(原始生代) | ||||
| 46億年 | 冥王代 | 地球誕生、月の形成(ジャイアント・インパクト説)、隕石の後期重爆撃期。地殻と原始海洋ができ、有機化合物(生命前駆物質)の化学進化の結果、原始生命体が誕生したと考えられている。40億年前の岩石や44億年前の結晶が見つかっている。 | |||












