2006年 03月 28日
寂しさの歌・・・・金子光晴
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あすは休養日。気分転換に「金子光晴詩集」を開いてみる・・・・
どっからしみ出してくるんだ。 この寂しさのやつは。
夕ぐれに咲き出たやうな、あの女の肌からか。
あのおもざしからか。 うしろ影からか。
糸のやうにほそぼそしたこころからか。
そのこころいざなふ
いかにもはかなげな風物からか。
月光。 ほのかな障子明りからか。
ほね立った畳を走る枯葉からか。
その寂しさは、僕らの背すじに這ひこみ、
しっ気や、かびのやうにしらないまに、
心をくさらせ、膚にしみ出してくる。
・・・・・
寂しさは、そのへんから立ちのぼる。
「無」にかへる生の傍らから、
うらばかりよむ習ひの
さぐりあふこころとこころから。
・・・・・
すこしづつ、すこしづつ、
寂しさは目に見えずひろがる。
襖や壁の
雨もりのやうに
涙じみのように。
・・・・・・
金子光晴詩集 『落下傘』 から 「寂しさの歌」より
by yascovicci
| 2006-03-28 01:24
| 絵画・写真・文芸・展覧会












